P.I.P. -プリズナー・イン・プノンペン / 沢井鯨


漢気第3弾。なんかもうちょっと違くなってきた。ハードボイルドだ。


プノンペン拘置所歴半年の著者が描く、謂われのない罪で収監された男の驚異の脱出劇。騙し騙されの頭脳戦、張り巡らされた伏線が最後まで息をつかせない前代未聞のアジアン・ノワール


ということなのですが、このひとはカンボジアでよっぽど絞られたのか―とにかく繰り返し出てくるのは「カンボジア人は信用できない」と「カンボジアでは地獄の沙汰も金次第」という2点。

自分が生き残るためなら、平気で人を殺せる人間だけがポルポト兵の中で生き残った。これが何を意味するのかわかるか?今、この国にいる三十歳以上の男の多くが過去にワイソムラップで、罪のない同胞を殺した経験を持ってるんだ。


アフリカゼミの時、ポルポトも勉強したので、そのへんのどんづまり感を思い出した。


最初の方は売春とか出てくるし、主人公の思想がマッチョだし、中盤は獄中生活だし、オエーと思いながら読んでました。しかもけっこう最後の方まで、騙されまくりの獄中生活で、もしかしてこのまま絶望して終わり??とやきもきしてたら、最後はさすがに胸のすくような、鮮やかな大逆転。「言っただろ。日本人は必ず借りは返すんだ。」