トニー滝谷

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あなたを いまでも 愛しい。

監督:市川準
原作:村上春樹
音楽:坂本龍一


村上春樹×市川準×坂本龍一って時点でもう反則です。これは映画じゃない。ミュージック・ビデオならぬブック・ビデオ。原作の空気感・質感をとても丁寧に追っていると思いました。すごく自然に「喪失」の気配がにじんでいました。音楽の功績は大きいと思う。

でもこの作品の1番の当たりは、西島秀俊のナレーションだったと思う。イッセー尾形にちょっと違和感を覚えてしまうほど、春樹ワールドにがっちりはまってたし、声がすでに孤独感であふれかえっていました。イッセー尾形もよかったんだけど(あんな哀愁あふれるバスローブ姿!)、村上作品における「主人公」は村上春樹自身を連想させすぎるので、もともとちょっと分が悪いと思った。

宮沢りえはあの細さと品性が現実離れしていて、よかったです。あんな着こなしは宮沢りえじゃなきゃむりです。「服を着るために生まれてきたようなひと」だもの。活かし方もすごくよくて、「服を買うのを控える」ことをトニーと話し合うシーンでは斜め後ろのアングルから捉えたり、事故にあう寸前に服のことを考えているシーンではサングラスをかけさせたり、とあえて表情を見せない演出で大事な場面を余計に印象的にしていたと思う。

ただ宮沢りえトニー滝谷の妻とアルバイトの女の子の2役を演るのはどうかなあ?と思いました。アルバイトの子は全然妻に似ていない、きれいじゃない子の方がおもしろかったのではないか、と思いました。宮沢りえと対はれる存在感のあるひとを思いつかないけど。


★★★★