シングルマン

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愛する者を失った人生に、意味はあるのか。
恋人を亡くした、ゲイのイギリス人大学教授ジョージのある1日を描く。

原題:A SINGLE MAN
監督・脚本・製作:トム・フォード
脚本:デヴィッド・スケアス
撮影:エドゥアルド・グラウ
原作:クリストファー・イシャーウッド
音楽:アベル・コジェニオウスキ
追加音楽:梅林茂


死んだ。劇場で偶然友だちに遭遇したのですが、鑑賞後「魂がぬけてる」と言われたくらいです。衣装は言うにおよばず、音楽・構図・科白・間/余白のとりかたなどすべてにおいて無駄がなくて、格が高い映画。トム・フォードどんだけセンスいいんだよ!

ストーリーはシンプルながら、いろんな要素がつまっていて味わい深い。生と死、獲得と喪失、夢を持って出てきた異国と帰りたくなる故郷、男性と女性、マジョリティとマイノリティ―どこかしらにぐっとくる要素があると思います。文学的でかっこよすぎるきらいもあるけど、人間の欲の深さとかしぶとさ、性のこっけいなところ、あきらめた瞬間になにかを獲得してしまう(その逆もまた然り)おかしみなんかもがっちり表現されていて、ふるえました。言葉にならない。。。

担当なので述べておくと、犬の描写もすばらしかったです。恋人の訃報に際して、犬の安否を気づかう心情。恋人がかわいがっていた犬と同じ犬種の犬を見かけて、「バター・トーストのにおいがする」と何度も頭に自分の鼻をかすめさせる場面。恋人が犬を「最も洗練された寄生動物」と評する一連の会話。犬の描写ひとつとっても万事まちがいなくて、信用できすぎる。

ひとりの世界はしずかでおだやかで調和がとれているけれど、結局ひととの火花のようなケミストリーが自分を思いがけない場所に運んでいくことが人生のすばらしさなんだ、と信じられる、強い希望を見せてくれる映画でした。

メイクぼろっぼろでトイレに行ったら、観劇後のギャル2人が「ジュリアンちょうかわいそうじゃない?」「ゲイの友だちなんて持つもんじゃないし〜!」とか言い合っていて、たのもしかった。やっぱり真性ロマンチストって男性しかなれないものなのかも。そういう感想も含めてすごくチャーミングな映画でした。
期せずして20代最後の映画体験となりましたが、最高でした!


★★★★★