冷たい熱帯魚

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この素晴らしき世界。
ベースは埼玉愛犬家殺人事件
町の熱帯魚屋さんを営む社本は、娘の万引きをとりなしてもらったことから、同業者村田の事業にとりこまれてゆくが・・・というお話。
最後まで立っていられるのは誰だ!?

英題:COLDFISH
監督・脚本:園子温
脚本:高橋ヨシキ
撮影:木村信也
編集:伊藤潤一
音楽:原田智英
Based on a True Story.


ちょうおもしろかったです。この日、悪寒と発熱のため(後にインフルであったことが発覚)「悪夢っぽく視えそうだなー」とわくわくしてゆきましたが、おもいのほかパワーをもらいました。見終わった後はもちろん肉を食いにゆきました。

圧倒的なテンションと観客に異常な集中を強いる力は『愛のむきだし』と同様。それが今回2時間半という尺でより明快でエンターテインメントなベクトルに昇華されておりました。村田と社本の関係性というモチーフは『ファイト・クラブ』、過剰な暴力と狂気が笑いと背中合わせなところは『アウトレイジ』なんかを彷彿とさせる。ドライブ感は舞城王太郎の小説に通じるところもあるかもしれない。

とにかく役者がみんないい。キャラクターをデフォルメし、けっこうきわどい「科白」的なせりふを言わせても大丈夫、と信頼されているかんじがしました。村田を演じたでんでんの名調子が最高くせになる。ボデーを透明にしてやる!出てくるたびに「よッ!千両役者!!」と叫びたい衝動にかられました。『愛のむきだし』の教団幹部のあのいや〜なかんじを思いおこさせる、フーターズ頭なんかもよかったな。各種エロとりそろえました的なかんじも。

去年たまたま「地方出身者」「親が複数回結婚している」「親の職業がヤバい」「親とは絶縁」っていう共通点を持った男子と連続で知り合う機会があったので、ちょっと感じ入るところがありました。親の職はそれぞれネズミ講の講元、新興宗教教祖、パチ・ラブホ経営社長という具合で子どもの彼らはもう親はないという覚悟のもと、異様な気迫ででかい仕事をしておりました。でもその彼らにもおそらく親ゆずりの「場当たり的な引力」がきちんと備わっていて、でんでん観るとそれを思い出した。明確なビジョンと哲学を示されると、その是非に関わらずそれがない人間はひきずられてしまう。

わたしはでんでんはこわくなかった。けど社本くんがこわかった。極論、社本くんに殺されるならまだでんでんのほうがいいや。わたしを含めて日本人はだいたい社本くんであり、でんでんにアジられる側。でんでんのミュータント化する可能性がある側。だから笑いながらもなおさらこわい。そんな映画でした。


★★★