ブラック・スワン

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純白の野心は、やがて漆黒の狂気に変わる・・・
ようやく「白鳥の湖」のプリマの座をつかんだニナは、純真な白鳥は完璧に踊れても、妖艶な黒鳥を表現することができない。バレエ道を挫折した過保護なママンが、ドン・ファンな振付師が、ライバルのビッチが、何より自分が自分を追いつめる。崖っぷちを疾走した果てにつかんだ「Perfect」とは・・・。
第83回アカデミー賞主演女優賞

原題:BLACK SWAN
監督:ダーレン・アロノフスキー(『レスラー』)
脚本:マーク・ヘイマン / アンドレス・ハインツ / ジョン・マクラフリン
撮影:マシュー・リバティーク
編集:アンドリュー・ワイスブラム
音楽:クリント・マンセル


超おもしろかったです。女版『レスラー』と聞いて、恐怖におののきながら観にいったのですが杞憂でした。わたしはこっちのほうが断然すき。少女漫画でならした女子たち、おまいらが好きなアレだよ!「岡、性を超えるんだ」「マヤ、恋をしなさい」!!だいたいウィノナ・ライダーを落ち目の元花形バレリーナにキャスティングして、ナタリーに私物を盗ませるなんて、いじわる演出からも観客が取るべきスタンスは明確。

前半はベタなホラー演出がとにかくこわくて、HP根こそぎ削られる。わたしはもともとホラーが苦手(not嫌い)で、いちいちでてくる鏡とか、閉鎖的な家のよどんだかんじとか、主体ドアップ続きで周りの様子が一切つかめないかんじとか、先端イタ描写とか、もうヒィィィィィィって犬木加奈子状態になっておりました。でも総じて良いホラーがそうであるように、笑いどころやぬきどころも効いてる。例えばニナの携帯電話ひとつとっても、着メロが「白鳥の湖」(ちょwwwおまえどんだけ根つめるんだw)とかいちいち発信主確認(基本おまえの電話、ママンからしかかかってこねえwww)とかね。

「レスラー」がヒロイックで感傷的なきらいがあるのに比べ、「ブラック・スワン」にはそんな甘やかな余裕を感じない。「レスラー」は過去の栄光という亡霊にとり憑かれていて、「ブラック・スワン」は現在進行形の戦いにまつわる亡霊にとり憑かれている。その痛々しさと神々しさには共通するところがあるかもしれない。「レスラー」では異性が破滅から引き戻そうと懸命に働きかけるのに比べ、「ブラック・スワン」ではみんな(とくに同性)が破滅の道へと追いつめる。まぁ、徹底した主観映画なので、追いつめられたってとるのも本人のさじ加減だけど。その女ならでは被害妄想もここまでくると調子が良い。自演乙!

あとは映画の本質とは関係ないけど、バレエ問題についても一応。わたしも実は有名な先生に角材片手にマンツーで10年弱バレエを教えられた、という経験があり、熱心なバレエファンではないもののふつうのひとよりはバレエに親しんでいるので。
んで、あれだけやせてるナタリーでもやっぱり全然バレリーナの体じゃないっていうのが一目瞭然で、最初にわーっと目がそこにいったことに自分でもびっくりしました。ボディダブルで本職のひとが入っていると聞いたけど、ほんとか!?と思うくらい。もっと削げてて、筋肉ガチガチで、体幹がしっかりしてる。要はアスリート体型のはず。あとは手足がもっと長いはず。フェッテの軸がブレてる、など。人種や骨格、顔の小ささなんかも(もちろん美貌も)多分に影響している芸術なので、そのルックの型の洗脳、いまだとけていないのだなあ。恐ろしき哉、バレエ道。

さて、話がそれましたが、そんなこんなもまったく気にならないくらい白眉なあのラスト。憐れんだり憤ったりする感想も見かけましたが、あれ以外のラストなんか台無しじゃんか。恍惚までこっちに伝染するナタリーのドヤ顔。カタルシスを超えて感動すらしました。(妹は「腸をはみださせながらおじぎ、ならギリあり」と言っておりましたよい☆)


★★★★