友ナシ、金ナシ、女ナシ。この愛すべき、ろくでナシ。
1980年代後半を背景に、19才の日雇い労働者・北町貫多の青春のもがきを描く。
酒と風俗におぼれ、読書だけが唯一のたのしみだった貫多(森山未來)が、同僚の正二(高良健吾)や古本屋の康子(前田敦子)との交流を通じて変わっていくのか?、というお話。
監督:山下敦弘
脚本:いまおかしんじ
撮影:池内義浩
編集:佐藤崇
美術:安宅紀史
スタイリスト:伊賀大介
音楽:SHINCO
主題歌ドレスコーズ『Trash』
原作:西村賢太『苦役列車』(第144回芥川賞)
あー、やっぱりこの監督の役者の動かしかた、すきだなあ。メイン・キャストのフレッシュな魅力の引き出しかたもさることながら、脇役の味がスルメ。独特の間合いや余白も健在で、丸の内TOEIでは、混んでいるのを忘れるほど、みんなひっそりと観ていたけれど、わたしはひとりでゲラゲラ笑ってしまいました。
しかし、同時にわたしコレぐずぐずに泣いてしまい。たぶん鑑賞時のメンタルによって、反応が全然ちがうような気がする。へたすると、となりのひとが爆笑してる場面でわたし号泣みたいな。なぜかと言うと、たぶん誰しもがこころのなかに北町貫多を飼っているからで。日下部正二みたいに世渡りできればらくだし、周りのひとにも好感もたれて、お互いWIN-WINだとわかっているけれど、どうしても北町貫多はこころの底で跳ね回ったり、毒づいたりしてる。
とくにわたしは基本日下部正二を好きだし、あまつさえ目指してもいるのに、いま現在、北町貫多濃度がバリ高なため、北町貫多に対するいたたまれなさとでもちょっとのうらやましさがないまぜになったきもちで、それはもうたいへんにこじらせて、エヴァ化しそうでした。
あとは、思ったことをざっと。
- 侮って甘く見ていたひとが、期せずして頭をかち割ってくれる話すきだ。
- 森山未來は町田康原作あたりもイケる気がする。
- 『ハイ・フィデリティ』のジャック・ブラックばりのマキタスポーツの総取りには、思わずこぶしを握った!
- 率先して「動物ごっこ」をおこない、すべてをうやむやにするようなスキル、わたしも欲しいよ。
- 原作と全然ちがうみたいなので、原作も読んでみたいな。
★★★