思い出の片隅の真ん中で 彼はいつも笑ってる。
1980年代を舞台に、長崎から上京した青年 横道世之介の大学1年生の1年間と世之介の周囲の人間の15年後を交互に描いてゆく。
監督・脚本:沖田修一(『南極料理人』『キツツキと雨』)
脚本:前田司郎
撮影:近藤龍人
編集:佐藤崇
美術:安宅紀史
衣裳:纐纈春樹
音楽:高田漣
主題歌:ASIAN KUNG-FU GENERATION『今を生きて』
原作:吉田修一『横道世之介』
信頼できる友だちがそろってほめていたので、劇場へ走りました。
桜の時期に観れてほんとうに良かった。いい意味でたるーっとした邦画らしい邦画だけど、160分の長さを感じさせないきらめきがありました。
この映画自体が、青春時代の思い出そのものみたいになっているのがおもしろい。光の入り方の美しさや楽しかったできごとと愉快な仲間たちのみで彩られた日々は美化された思い出を見ているようだし、思い出すと顔がほころんでしまうような映画体験は、「あいつと知り合っただけで、お前よりだいぶ得してる気がする」という綾野剛のせりふそのままの気持ちにさせてくれる。ふとした時に思い返してはじわじわ鮮やかになりそうな映画。
登場人物があまりにもまっすぐな善人ばかりなので、ちょっとあまのじゃくな気持ちになったりもするけど、とにかくキャストがいきいきしていたので、きもちよく観れました。性格のいいリア充なら爆発しなくていいよ!
劇場も素直で性の良い観客が多かったので、プラスに受け取りやすかったのも大きいかも。
あとはごはん描写がよかったなあ。ナイフとフォークを捨てて2人でかぶりつくでっかいハンバーガーや、水をはったたらいに足を浸しながら汗だくですするラーメン、息子の彼女を全力でもてなすためのテーブルいっぱいの地の物や、クリスマスを祝うジャンクなごちそう。1年間を切り取った映画で、季節を感じさせる描写がいちいちノスタルジックで切なかったのがぐっときました。
学生だったら、しばらくは学校で友だちとこの映画のシーンやせりふをマネするあそびで楽しめただろうなー。
★★★★