フォックスキャッチャー

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なぜ大財閥の御曹司は、オリンピックの金メダリストを殺したのか?
ジョン・デュポンが結成したレスリングチームに引き抜かれた五輪メダリストの兄弟が、徐々に彼の狂気に蝕まれていく。

監督:ベネット・ミラー
脚本:E・マックス・フライ / ダン・ファターマン
撮影監督:グリーグ・フレイザー
編集:スチュアート・レヴィ / コナー・オニール / ジェイ・キャシディ
美術監督:ジェス・ゴンコール
衣装:カシア・ワリッカ・メイモン
音楽:ロブ・シモンセン


思えば最初から狂っていた歯車が崩壊していく様子を静かに淡々と描いた、背筋が冷える作品。ベネット・ミラー監督は、とことん「アメリカ」を突き詰めようとする姿勢とそれでいて客観的な視線が似ていることもあり、これで爆発的なエモーショナルさを獲得すれば、クリント・イーストウッドみたいになっていくかもしれないな、と思ったり。

優れた師としてマッチョなチームを率い、スポーツを通してでしか築けない、血よりも濃い特別な絆を結び、善きアメリカ国民のシンボルとなりたい―そして何よりそのマッチョなアメリカイズムを母に承認してもらいたいという強烈な欲求。スティーヴ・カレルは、その触媒としての可能性をチャニング・テイタムに見い出し、自分の願望をやすやすと獲得しているように見えるマーク・ラファロを憎む。しかし、ねじれたコンプレックスを解決しようとする手段は金しかなく、そこに対等な関係が生まれるはずもない。

スティーヴ・カレルの、共通言語を持たないかんじがほんとうにこわかった。


★★★★