ムーンライト


あの夜のことを、今でもずっと、覚えている。
マイアミを舞台に自分の居場所とアイデンティティを模索する少年の成長を、
少年期、青年期、成人期と3人の俳優に分けて描く。
第89回アカデミー作品賞/脚色賞/助演男優賞

原題:MOONLIGHT
監督・脚本:バリー・ジェンキンズ
脚本:タレル・アルヴィン・マクレイニー
撮影:ジェームズ・ラクストン
編集:ナット・サンダーズ / ジョイ・マクミロン
音楽:ニコラス・ブリテル


鑑賞前はなんとなく、Frank OceanやKendrick Lamar的な詩情を備えた自分にとって大事な一本になりそうな予感がしておりました。その予感を超えて、なんてロマンティックな映画なんだ!アップの多用とキャストの顔力により、否が応でも増す親密さ。描写はしずかだけど、根底に流れる熱さ/エモーショナルさよ。エンドロールの短さにもぐっときてしまった。惹きつけられて、111分あっという間でした。

メタファーも、シンプルかつ力強くて、監督の信条がわかるよう。海(人生)を渡っていくのに、ひとの手に身を預けることと、自分で波を切り開くことの意味。ひとに料理をふるまうことの意味。

わたしは、主人公が意中の人が切り盛りするダイナーへ会いに行って、Aretha Franklin "One Step Ahead"がかかっていた時点で、多幸感やらなんやらで泣いてしまいました。「これはもうだいじょうぶだ」という安堵感。


しかもその意中の人から贈られる曲が!


3人の俳優は顔合わせも打ち合わせもしていないというのに、不思議に同一人物に見える不思議さ。監督と脚本家が偶然同じ小学校出身で同じような出自、というあたりにもミラクルを感じました。孤独を感じているひとの寄る辺となり、月明かりのようにそっと明日を照らしてくれるような映画。すばらしい!


★★★★★