ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣


<ヌレエフの再来>と謳われる類まれなる才能と、それを持て余しさまよう心―
19歳で英ロイヤル・バレエ団の史上最年少プリンシパルとなるも、人気のピークで電撃退団。
バレエ界きっての異端児の知られざる素顔に迫ったドキュメンタリー。

原題:DANCER
監督:スティーヴン・カンター
「Take me to church」演出・撮影: デヴィッド・ラシャペル
撮影:マーク・ウルフ
編集:フェデリコ・ローゼンツヴィット
音楽:イラン・エシュケリ



ドキュメンタリー映画としての出来はともかく、素材が素材なんで、おもしろくないはずがない。Black Sabbath "Iron Man"で幕開け!Diddy-Dirty Moneyのタトゥー!!バレエ界のバッド・ボーイ―ホントこのひとリアル『昴』なんだよなぁ。


"Take Me to Church"までの道筋はあまり簡明化されていて、ちょっと作為的にも感じてしまうのだけど、バレエ学校同期のJade Hale-Christofiが振付している時点でぐっときてしまう。長年ずっと天才を見つめ続けてきたまなざしには、賞賛だけでなく羨望も含まれていただろうに。だからこそセルゲイ・ポルーニンが一番美しくみえる角度や動きがわかるんだろうなぁ……。

"Take Me To Church"がひとつのクライマックスになっているけれど、個人的には踊る喜びにあふれたバレエ学校時代やロイヤル・バレエ団初期の映像をずっと観ていたくなってしまう。とくに本人も「生きていると感じられる」と言っているとおり、ジャンプは観ているこちらもうれしくなってしまうほど。
どんな分野でも、能力と円熟と情熱が三位一体になるのは奇跡的だし、刹那のことなのかもしれない。

しかしバレエ初心者としては、もうプリエ*1ひとつとっても、ターンアウト*2が背骨が折れるほどうつくしくてしぬ。こちとら笑われるくらいからだが硬いので、ポルーニンママが「TVを観ている間はずっと開脚させていた」のにならってがんばろうと思いました。


★★★

*1:膝を曲げる動作

*2:股関節を外に開くこと