ノクターナル・アニマルズ

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20年前に別れた夫から送られてきた小説。
それは愛なのか、復讐なのか。
2016年ヴェネツィア国際映画祭 銀獅子審査員大賞

原題:NOCTURNAL ANIMALS
監督・脚本・製作:トム・フォード
撮影:シーマス・マッガーヴェイ
編集:ジョーン・ソーベル
衣装:アリアンヌ・フィリップス
音楽:アベル・コジェニオウスキ
原作:オースティン・ライト『Tony and Susan(ミステリ原稿)』


『シングルマン』信者のわたくしですので、原作バッチリ予習済で。完璧すぎるキャスティングや画面構成はデフォ。さらにプロットの見せ方は、最初から最後まで、「コレ原作読んでなかったらどうなってたんだろ?」とふるえっぱなしでした。おそらくラストのスーザンのように虚無の迷宮に取り残されてしまったのでは…。

(以下ちょっとネタバレ)


現実の過去と現在、さらに元夫の小説が交錯するこのお話の大きな謎は、送られてきた小説の「意図」。この小説の主人公を元夫役のジェイク・ギレンホール一人二役で演じているため、必然「小説の主人公」=「元夫」の投影というミスリードを誘う。原作だとこのミスリードを終盤で解消してくれるので、話がぐっとわかりやすくなっているのだけど、*1映画では「そもそもすべてがスーザンの妄想」とまで取れるほど、おそらく意図的に解釈の幅を広げている。

このブログの解説、とてもわかりやすかった。

lovekuzz.hatenablog.com


とことん容赦がないな、と思うのは、この映画自体が相当注意深く観ていないと分岐をまちがえてスーザン共々バッドエンドに落とされるというつくりになっていることで、トム・フォード自身も「『ノクターナル・アニマルズ』は、人生の中で私たちがなす選択がもたらす結果と、それを諦めて受け入れてしまうことへの、警告の物語です」と語っている。ここまで自他に厳しいと生きづらいだろうな、と思うけど、それがプロフェッショナルのお仕事につながるんだろうな。

とりあえず、ここのところ『マンチェスター・バイ・ザ・シー』『淵に立つ』(DVD)と3本連続で、娘が酷い目にあう映画を観てしまっておりつらい。次はハッピーなやつ観たい……


★★★★

*1:映画のキャッチコピーは原作をふまえてかとても親切だと思う