万引き家族

f:id:tally:20181222141615j:plain


盗んだのは、絆でした。
2018年カンヌ国際映画祭パルム・ドール

監督・脚本・編集:是枝裕和
撮影:近藤龍人
美術:三ツ松けいこ
衣装:黒澤和子
音楽:細野晴臣


www.kore-eda.com

「invisible」という言葉を巡ってというメッセージを読めばわかる通り、是枝監督は立派な人であり、様々な角度から熟考した自分の考えを正しい言葉で語ることができる人である。そんな監督の「集大成」的作品が、パルム・ドールを受賞したことは、とてもすばらしいことだし、日本の誇りだと思う。

実際、映画もオール5の優等生だった。「家族」「善悪/正しさ」「ニュースに表れてこない真実」など、多方面から語ることができる設定、その描き方のバランス、映像や美術や音楽のうつくしさ、など全方位において隙無し。

とくにキャスティングは、メインキャストに圧倒されるのはもちろん、池松壮亮が映った瞬間の「池松壮亮ここにあり!(笑)」感とか、『きみはいい子』で「こちら側」だった高良・池脇コンビが「あちら側」へ、とかニヤリとしてしまうようなほのかな毒っ気もあり、完璧。
また、個人的には「invisible people」という側面よりも、もっと普遍的な「誰しも最初のメンターは親」「親の神通力が消える瞬間」という側面にぐっときたり……したのですが……。

この映画を是枝作品の中でとりわけ好きか、また後々まで自分の心の中で輝き続けるか、と問われると、「うーん」と唸ってしまう。非常に情報量が多く、かつ非常に教科書的というか常に「このシーンはどのシーンと呼応しているでしょう?」「この時の登場人物の心情は?」「これは何の暗喩?」「心情の変化がわかる場面を挙げよ」とテストを解かされているような、またその裏に百点満点の回答の存在を意識してしまうような、居心地の悪さがあり、あまり映画にすきまや余韻を感じられなかった。それはもちろん是枝監督の本意ではなく、わたし側に問題があると思うのだけど。

余談ですが、うちの子どももお麩好きなので、あのシーンはぐっときました。


★★★