ブリグズビー・ベア

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僕には、君がいる。
25年間隔離されていた青年の心は常識を飛び越えてまわりの人びとも変えてゆく……
ちょっぴりせつなくて可笑しいハート・ウォーミングストーリー。

原題:BRIGSBY BEAR
監督:デイヴ・マッカリー
脚本:ケヴィン・コステロ / カイル・ムーニー
製作・プロデューサー:フィル・ロード / クリストファー・ミラー


ここのところ、『万引き家族』『ワンダー』と観てきて、3本目も!「世の中こんなに『正しさ』に疲れきっているのか…、こんなに『やさしさ』を求めているのか…」とちょっと苦笑してしまいましたが、3本目のこれが一番すきかな。

設定がちょっとうるさいけれど、基本的には王道の「青春成長譚」「親離れ子離れ」の話だと思うし、「人が生きるために必要な『物語』」の話だと思う。

まず、すごいなーと思ったのが、主演(兼脚本)のカイル・ムーニーが序盤きちんと「子ども」に見えること。その奇想天外な生い立ちのおかげで、精神年齢が肉体に追いついていないゆえの、外の世界に飛び出した直後のあどけない・よるべない表情よ。その後急ピッチでの成長を余儀なくされるものの、刺激を吸収してぐんぐんと青年らしくなっていく様がまぶしい。はじめてのコーラ。はじめての映画。つながったネット回線。自分の好きなものをはじめて〝Dope as shit釤と言ってもらえたときの、目も眩むような多幸感。

全員善人ぶりが鼻につくという意見もわかるけれど、善描写がどれも殺人的にぐっとくるもので……。「人生初のパーティーか?」とかけられた言葉。「ヘタクソな歌」を「でもいいね」と認めてもらう安心。親のやりたいことリストは友だちと実行されてしまうもの。「古い親」の元に黙って送り出してくれる「今の親」。

ラストのブリグズビーは、まるで『インサイド・ヘッド』のビンボンさんで、ただのイマジナリーフレンドであっても泣けるのに、それが「古い親」の創作をアップデートした自分の物語の化身で、なおかつその「古い親」をマーク・ハミルが演じている、ってどれだけ盛ってくるんだ!とただただ涙を流しました。


★★★★