15時17分、パリ行き

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その時、3人の若者が乗ったのは運命の列車だった。
これは、誰の日常にも起きる現実。

原題:THE 15:17 TO PARIS
監督:クリント・イーストウッド
脚本:ドロシー・ブリスカル
撮影:トム・スターン
編集:ブルー・マーレイ
美術:ケヴィン・イシオカ
衣装:デボラ・ホッパー
音楽:クリスチャン・ジェイコブ
原作:スペンサー・ストーン / アレク・スカラトス / アンソニー・サドラー / ジェフリー・E・スターン『The 15:17 to Paris: The True Story of a Terrorist, a Train, and Three American Soldiers』
Based on a True Story.


公開時、ドラちゃん(妹)が「今年ベスト級」と評価していたので、どうしても劇場で観たかったのですが、叶わずDVDで。

たぶん観た人全員が思うであろう、「イーストウッドここまで来たか!」まるで映画で、世の中の「奇跡」と呼ばれるできごとの実態を解き明かしてしまおうとするような試み。『ハドソン川の奇跡』で描いた「プロは奇跡を起こさない」という面をさらに深く掘り下げて、「人生のすべての道程に意味がある」とするような実験映画だった。日々通り過ぎていってしまうニュースの意味や背景を考えさせるという意味では、『万引き家族』に通じるものもあるかも。

映画を観終わってぐっとくるのが、イーストウッド映画史上最短のランニングタイム94分の割り振り。とくにスペンサー 不遇の日々と、3人の観光パートの尺の長さ。観客を弛緩させ、倦ませるのに不可欠な尺であり、ぼんやり「こんなことしてて意味あるのかなー」という心境になるのは、当時のスペンサーの心情に同化することでもある。「信仰」「SERE」「柔術」などのピースを周到に配置しながら、3人のありふれた日常に観客が完全に平和ボケしきったところで、突如スタートする列車パートのスピード感よ。鳥肌が立ちました。

いま、意に染まない場所で、不本意な状況に置かれているとしても、それが無駄になることはない。待ったなしのタイミングで、為すべきことを為せ。御大(87歳)のなんともパワフルでありがたいメッセージよ。もはや神視点かよ。

主演の3人も、ご本人ならではの実在感・ボンクラ感がチャーミングだし、自身を演じてほしかった俳優が、ザック・エフロンクリス・ヘムズワースマイケル・B・ジョーダンってラインナップもまた良すぎる!


★★★★