完璧な悪夢
緻密に張り巡らされた恐怖の罠。
“フィナーレ”まで瞬きさえ許されない。
監督・脚本:アリ・アスター
撮影監督:パヴェウ・ポゴジェルスキ
編集:ジェニファー・レイム、ルシアン・ジョンストン
美術:グレイス・ユン
衣装デザイン:オルガ・ミル
セットデコレーター:ブライアン・ライヴス
アートディレクター:リチャード・オルソン
ミニチュア模型・特殊メイク:スティーブ・ニューバーン
音楽:コリン・ステットソン
いまさら観ました。
絶対に観ない!*1と思っていたので、けっこう前知識を入れてしまっており、自分にはちょうど良い湯加減の怖さになっておりました。
以下ネタバレ。
「血筋/遺伝という呪い」というイヤ〜な陰湿要素と、後半ペイモン様爆誕までの笑みがこぼれてしまうようなドライブ感、のハイブリッドが最高!
- 前半、ホラーの定石では一番最初に死ぬわけないキャラが死んだり、完全に予測不能。終着点が全く見えずとてもこわい。
- 中盤、母アニーが意気揚々とやらかせばやらかすほど事態が悪化していくさま。もう恐怖や悲劇を通り越してフフッてなりはじめる。なに再現しとんじゃーい!どさくさにまぎれてなにカミングアウトしとんじゃーい!おまえが燃えるんかーい!
- ペイモン様のイラスト
- そもそも家がおしゃれすぎる
- 全裸でそっとたたずむなや!
- 天井はりつき SHINOBIスタイル
- 全裸土下座待機
コッ!、など明日からマネしたくなる小技も盛りだくさんで、結果楽しかったな、と。
ホラーって「なんだかよくわからない」余白の部分がこわいのであって、ここまで緻密でロジカルだと、さっぱりとした妙なあかるさすらある。
ひとの人生が、決定的に「取り返しがつかなくなる」ポイントのずっと前に運命は決まっていた、根本的な破綻要因ははじめからずーっと存在し続けている、という怖さは、『悪の法則』を思い出したりもしたけれど。
なにしろジェットコースターの終着点は、終わってみれば予定調和の祝祭なので、鑑後感はわりと躁寄りでした。
次回作は、前情報なしでイケる…かな……?
★★★★
*1:こわがりなので。しかし、昔からなぜか親しい人にホラー好きが多く、結果ご相伴するかたちでけっこう観てしまっている。