ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー

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最高な私たちをまだ誰も知らない
史上最高!全米が熱狂した命がけの爆走青春コメディ

原題:BOOKSMART
監督:オリヴィア・ワイルド
脚本:エミリー・ハルパーン、セーラ・ハスキンズ、スザンナ・フォーゲル、ケイティ・シルバーマン
編集:ブレント・ホワイト、ジェイミー・グロス
撮影:ジェイソン・マコーミック
美術:ケイティ・バイロン
衣装デザイン:エイプリル・ネイピア
キャスティング:アリソン・ジョーンズ
音楽:ダン・ジ・オートメイター
音楽監修:ブライアン・リング
製作総指揮:ウィル・フェレル、アダム・マッケイ、ジリアン・ロングネッカー、スコット・ロバートソン、アレックス・G・スコット


今年、まちがいなく青春映画の当たり年ですよね!
ずーっと青春映画の甘酢やきらめきに魅せられつづけてきたけれど、ついに今の時代にはここまでアップデートされてきたか……という『ロング・ショット』の時と同じ感動がありました。
個性や多様性の肯定は当然の前提で、その上で青春映画の定番もきっちり押さえてくる最新型の青春映画!

苦しい現状をていねいにすくいあげる青春映画ももちろんすばらしいけれど、ややファンタジックであっても、今クールと思える価値観で映画内を満たして、観客をひっぱり上げる映画も尊い。青春映画って製作しているのは基本中年なわけだから、中年から青年へのエールが込められていると思うのですが、その内容が正しくて熱くて、そこにもぐっときてしまいました。

これが長編監督デビューのオリヴィア・ワイルドグレタ・ガーウィグ『レディ・バード』で出てきた時の期待感・信頼感がよみがえりました。

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まず、主人公のモリー&エイミーコンビが愛おしくてたまらない。おぎやはぎ並みのほめ合い芸 だいすき!『レディ・バード』に続いて、ジョナ・ヒル妹 青春映画界のミューズかよ!*1

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キャスティングもいちいち気が効いていて、コメディリリーフの校長役に、監督の配偶者でもあるジェイソン・サダイキス。トリプルAと揶揄される女子役に、実際はジョナ・ヒル妹の親友であるモリー・ゴードン。従来なら男子がキャスティングされそうな、エキセントリックなジジやクールな一匹狼ホープ。ヴィクトリア・ルエスガやニコ・ヒラガのスケーター勢のヌケ感もリアル。

パーティーデビュー教材としても秀逸で、一夜の多幸感、冒険、やらかし、喜怒哀楽がぎっしり詰まっている。ドラッグにアルコールにセックス、夜遊びの快楽をパッケージングしながらも、きちんとそのリスクも笑いを添えて描いているのも、すばらしい配慮。
こういうバランスは全編にわたってすばらしい。勇気を出して飛び込めば、思いの外すっと手に入れられる宝物のような時間。でも一夜では取り返せないものの残酷さ。きちんと両面描かれていて、誰にとっても時間やチャンスは平等、という描き方がものすごくフェアだな、と思いました。

ダン・ナカムラによる音楽はもちろん最高!
青春映画の見せ場、プールシーンでかかるPerfume Genius "Slip Away"のうつくしさ・せつなさ。"You Oughta Know"はわたしがイギリスにホームステイしていた時に、失恋したホストファミリーがパブで熱唱していたので、アッーーーと思ったし、最強の助っ人登場時にかかる"What's Golden"は大大大好きな曲、かつ曲のイメージが自分の中でも完全にコレな画だったので、ブチあがりました。わたしもこの曲で登場して若者を助けたい!

主人公たちのもともと持っている良さを肯定しながらも、*2眼を、世界を、開かせ、最後には「でも世界はもっともっと広くて まだまだ成長できるよ おもしろいのはこれから!」という未来への余韻、希望と昂揚感が残るのは、『ハーフ・オブ・イット』と完全に通じるものがあり、同時代性を感じました。
次作もめちゃくちゃ期待してます!


★★★★  

*1:もちろんシアーシャ・ローナン

*2:彼らの城である図書館もちゃんと役に立っている