燃ゆる女の肖像

f:id:tally:20201217021044p:plain


すべてを、この目に焼き付けたー。
18世紀、フランス。
望まぬ結婚を控える貴族の娘と、彼女の肖像を描く女性画家。
生涯忘れ得ぬ痛みと喜びを人生に刻んだ恋を辿る追憶のラブストーリー。
第72回カンヌ国際映画祭脚本賞&クイア・パルム賞


英題:PORTRAIT OF A LADY ON FIRE
監督・脚本:セリーヌ・シアマ
撮影監督:クレア・マトン
編集:ジュリアン・ラシュレー
衣装:ドロテ・ギロー
オリジナルスコア:パラ・ワン、アーサー・シモニーニ
サウンド:ジュリアン・シカール、ヴァレリー・ディループ、ダニエル・ソブリノ


どのシーンもまるで絵画のような、(女優さんがまた!みんなそろって絵画顔!)「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらを覗いているのだ」映画。

うつくしくて、繊細で、エモーショナル。
ギリシャ神話(オルフェウス)の引用によってより解釈に深みが増す点など、『君の名前で僕を呼んで』と共通点が多いと感じた(『君の名前で〜』の方は旧約聖書ユダヤ教ギリシャ文化になぞらえていたけれど)。

印象的な色彩と豊かな生活描写も似ていて、エロイーズの青、マリアンヌの赤、ソフィのオレンジのドレス。リキュールグラスに注がれたワインや薪のはぜる大きな暖炉、夜の合唱歌など、ひとつひとつのアイテムとその調和が、この世界への没入を誘われる魅力にあふれていた。


La Jeune Fille en Feu (Bande originale du film)


ただ、『君の名前は〜』があふれんばかりの日差しの中、せつないながらもどこかバカンスの多幸感と未来への希望をたたえていたのに比べ、こちらは吹きすさぶ海風の中暖炉の前で身を寄せ合うような性別と時代の重みが重量級だった。
ラスト二度の再会の経緯がまったく説明されないのもすさまじくて、ただただ「自分は生涯この相手を想いつづける」という覚悟と迫力が迫ってきた。

エロイーズ役のアデル・エネルが監督の元パートナー、赤ん坊のかたわらで堕胎、相手の股間に自分の姿が映った鏡(!)など、個人的な好みとしては、若干アートとエモが過ぎて胸やけする部分もあったけれど、とにかく「こんなにエモを焼きつけてしまって大丈夫ですか?(ありがとうございます……)」という気持ちになりました。


★★★★