街の上で

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誰も見ることはないけど 確かにここに存在してる

監督・脚本:今泉力哉
脚本:大橋裕之
音楽:入江陽
主題歌:ラッキーオールドサン


今泉監督の作風は低予算ほどかがやくのがすごいな、と思う。ずっと撮りつづけられるし無敵じゃん。今作はご自身がカウリスマキジャームッシュの名前を挙げていたのも納得。市井の人々のいとおしさと、なにげない日常に宿る人生の豊かさが詰まっている。


まずは、本当に下北に実在しているとしか思えないキャストの息づきかた。「こういうカップルいるよなぁ」という組み合わせの妙。矢印の向きの説得力。若葉竜也のかっこわるさ&かわいさは最高。雪の彼氏が途切れない感じ。青とイハの距離感。映画監督の子はペインターの友だちに激似。成田凌の打点よ(あの絶妙なチェーンネックレス!)。元・井の頭線の民で酒場でバイトしていたことのある身としては、バーのマスターも見逃せない。

さらに、自分でも言ったことなかったっけ?と思うようなせりふや、思わず脳内で返答してしまうような会話の妙に、にんまりしっぱなしだった。何回も「この世に地獄があるとしたらここだ」と大豆田とわ子風のナレーションを入れそうになってしまった、真剣さゆえのおかしみ。「聞きますよ、恋バナ」早く言いたい〜!

映画ならカットされてしまうような瞬間でも見つめてくれているひとがいる、というやさしい目線には、胸がいっぱいになった。思えば、全編がそんな瞬間でできているような映画なのだ。そんな中にひっそりと変わっていく街の風景や人の死の匂いも忍ばされていて、郷愁を誘われる。あぁ、にしんばで飲みてー。

マヒトゥ・ザ・ピーポーの「END ROLL」、若葉竜也の「チーズケーキの唄」(監督がつくったのかよ!)、入江陽の劇伴、どれも最高にエモかったので、サントラ出してほしいよ……。


★★★★