茜色に焼かれる

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悪い冗談みたいなことばかり起きるこの世界で
母ちゃんも、僕も、生きて、生きる。

監督・脚本・編集:石井裕也
助監督:岡部哲也
撮影:鎌苅洋一
編集:岡崎正弥
美術・装飾:石上淳一
衣裳:立花文乃
ヘアメイク:豊川京子
音楽:河野丈洋
主題歌:GOING UNDER GROUND


前半ただただ不快で、ずっと「この映画どこから巻き返しがくるのかな?」と思いながら観てしまった。
これが弱者に寄り添った映画と言えるのか?クソや不幸の解像度は高いのに、救済/逃避ルートやカウンター策の解像度が異常に低くて、本当に状況を善くする気があるのかな?と疑問に思ってしまった。むしろ「コロナ禍だから飲食店はつぶれる」「お金に困っている、もしくは生い立ちやメンタルに問題がある女は風俗勤務するしかない(そして風俗業は「ふつうの人」ならやりたくない仕事にちがいない!)」etc……という決めつけに近い絶望の刷り込み。か〜ら〜の〜愛や精神論への着地も含めて、総じて「思考放棄」して弱者の出口を塞いでしまっている物語に思えてしまった。
すべてが材料としての理不尽に感じられ、キメの「まあ、頑張りましょう」もずっと「頑張りどころ/我慢しどころ そこではないのでは!?」という違和感しかなかった。

まずわたしは絶対お金受け取るマンなので、そこから壮大な解釈違いだし、この件について子どものコンセンサス取っているのかも非常に気になった。謝罪や制裁が欲しかったなら、そこでこそ「芝居」の上手さを発揮したらよかったのに。(怒るべきところで笑ったり、肝心の子どもにも家庭内「ルール」を破って嘘をついたりと、「芝居」しているのに…。)
「ルール」に裏切られてばかり、との強調が続くけれど、救済ルールについての扱いがフェアじゃないと感じた。賠償金だってルール。バンド飲みも養育費も辞めたらいい。アングラ演劇時代やカフェをやっていた時のつながりは何も残っていないのか?協力金申請した?奨学金や転校について調べた?どこが良いのかまるでわからない同級生についてだって、店長はちゃんと忠告してくれていたじゃん。
わたしがこのお母さんの友だちだったなら、一緒に一生懸命改善の道筋を考えたいなと思うけれど、自分の意見なにひとつ聞いてもらえないんだろうな、とも思う。何が信念や幸せなのかいまいちつかめない、暴走するお母さんがこわかった。あんなの子どもおかしくなるし、「大好き」なんて言わせないでくれよ……。


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ケイちゃんについては好きになれたし、片山友希さんの佇まいがすばらしくてファンになってしまったのだけれど、嬢への偏見がもう…。ちゃんとリアルな知り合いや取材あってのアレなんですか?同じ境遇の子が観たらどう思うのよ…。

たしかに世の中は不条理で地獄だけど、状況を善くする気があるなら、一つ一つの問題について頭を絞って結び目をといていくしかないと思う。息子の灰色の脳細胞の使い道よ…。
役者陣の熱演は文句なしにすばらしかっただけに残念。


★★