プロミシング・ヤング・ウーマン

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わたしも彼女も”前途有望”なはずだったー
医大生のキャシーの怒りはまさに限界突破
甘いキャンディに包まれた猛毒が全身を駆け巡る、復讐エンターテインメント
第93回アカデミー賞脚本賞

原題:PROMISING YOUNG WOMAN
監督・脚本:エメラルド・フェネル
撮影監督:ベンジャミン・クラカン
編集:フレデリック・トラヴァル
美術:マイケル・T・ペリー
衣裳:ナンシー・スタイナー
音楽:アンソニー・ウィリス
製作:マーゴット・ロビー、ジョニー・マクナマラ、トム・アカーリー、ベン・ブラウニング、アシュリー・フォックス、エメラルド・フェネル
製作総指揮:キャリー・マリガン、グレン・バスナー、アリソン・コーエン、ミラン・ポペルカ


観たい映画がたまりまくっていて、どれにしようか悩んだんだけど、マーゴット・ロビー製作でキャリー・マリガン主演(&総指揮)なんて信頼感しかない…と決めました!

観る前から題材については知っていたので、これはエンターテインメントにするバランスが相当難しいのでは…と思っていて。おまけに「ハーレイクイン」的ポップ&キッチュなビジュアルとタランティーノ調の演出がかまされていたので、出だしから「ちょっと悪趣味に傾きすぎでは?」と危ぶんだりもしたのだけれど…。

しかし、しかし、わたしこれ嫌いになれないわ……!展開はベタだし、粗も多いし、主観的になりすぎている(被害者の蚊帳の外感がすごい)とも思うし、この映画を嫌いだったり気分がふさいでしまったひとの気持ちもわかる…。それでも、キワキワのキワでものすごくぐっときてしまった。映画的な昂奮は最大限に担保しつつも、「娯楽として消費させないぞ」という気概がビシッと通っているのが本当にすばらしい。
アーロン・ソーキンの『シカゴ7裁判』の脚本が見事だったので、「これでオスカー獲れないのかぁ」と思っていたけれど、これが長編デビュー作のエメラルド・フェネルが監督・脚本を務めているのだと思うと、バランスが絶妙すぎてふるえる。

ここまでわたしの心をつかんでくれたのは、やはりキャリー・マリガンの力が大きいと思う。とにかくビジュアルの説得力からしてすごい。美人だけれど若くなく、自罰的な痛々しさが漂い、絶対に声をかけてはいけない地雷臭を隠そうともしていない、けどスタイル抜群。
ブリトニーの「Toxic」で出陣するシーンはもう地獄がすぎて絶対にいけないのに、わきあがる昂揚感を抑えられなくて泣いてしまった(限界情緒崩壊)。

自分は映画を観る時、「正しさ」に拘泥しすぎてしまうことがあるのだけれど、この映画については「めちゃくちゃ正しくない方法だけど、正したい気持ちわかる」と痛いほど思えた。命をかけないと復讐もままならないなんて途方もなくせつない話だけれど。
そして、過去の自分の行状に追いかけられて復讐される話、「今」すぎて鳥肌。*1
同性による加害や、過去の自分は消せないけれど記憶と贖罪をし続けるべき、という基本をきちんと描いているのもとても良かった。


★★★★

*1:小山田問題