オールド - タレ日記

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そのビーチでは、一生が一日で終わる。
M．ナイト・シャマラン監督が放つ、謎解きタイムスリラー

原題：OLD
監督・脚本・製作：M・ナイト・シャマラン
撮影監督：マイケル・ジオラキス
編集：ブレット・M・リード
衣装デザイン：キャロライン・ダンカン
プロダクションデザイン：ネイマン・マーシャル
音楽監修：スーザン・ジェイコブス
作曲：トレヴァー・ガレキス
原案：ピエール・オスカル・レヴィ、フレデリック・ペータース

やはり閉じられた小さな世界を描く名手。オープニングで自ら「劇場で物語を語るんや！」と高らかに宣言するブレなさ。正直設定はかなり雑いけど、きちんとエモがそれを超えてくる。

以下、ネタバレ

無情に過ぎていく時間を前に「ちょっと時間をちょうだい」「考えさせて」という言葉がくり返されるけれど、現実でも節目のできごとは準備も心構えも間に合わずに過ぎていくものだよな、と。
カッパ一家と家族構成が同じこともあり、なんだか勝手にミッドライフ・クライシスを乗り越えて、老後を迎え、ついに走馬灯を観ているような妙な安らぎを感じてしまった。子どもたちよ、うたっておくれ……。
プロムにも行けずに青年期を失ったカッパ姉弟はたまったものじゃないが、実際現実世界でもこのコロナ禍が若い世代の人格形成に影響しないわけはなくて、彼らは今急速に思考力やある種の諦観を身につけつつあるのかもしれないな、などと思った。そう思うと美しいビーチで最期まで安らかに過ごすという選択肢もなくはなかったのに、最後まであきらめなかった２人の姿にシャマランのメッセージを感じる。

また、画面に繰り広げられる「老い地獄」を観ていると、現在の自分がこの先の老いの何に対して恐怖を感じるのか、というのがリアルにわかるのもおもしろかった。未熟なままでの妊娠／出産、家族の死、基礎疾患、記憶力や視力・聴力の低下ー。わたしは意外にも、「容姿の衰えがこわい！」とはっきり思い、たいしたツラでもないのに…！と自分でびっくりしてしまった。まぁ現在進行形で自覚している老いだからかもしれないけど。

あいかわらずクゥ～～～！となる味わいポイントも多い。