わたしは最悪。


人生は選択ー時々、運命。
"最悪"な本音が"最高"の共感を呼び世界が絶賛!
新時代を生きるすべての人に贈る、恋と成長の物語。

原題:THE WORST PERSON IN THE WORLD
監督・脚本:ヨアキム・トリアー
脚本:エスキル・フォクト
撮影:キャスパー・タクセン
編集:オリビエ・ブッゲ・クエット
美術:ローゲル・ローセンベリ
衣装:エレン・ダーリ・イステヘーデ
音楽:オーラ・フロッタム


つまり最高。タイトルが示すとおりに一面では語れない人間讃歌。自分/誰かが最悪だと思った人間も、自分/他の誰かにとって最高たり得る。ほぼ前情報なく観たのだけれど、監督はLvTの甥なのかー!

『僕の狂ったフェミ彼女』という小説に、彼氏が「正直さ、考えると怖くならない?将来、旦那も子どももいなかったら寂しいんじゃないの?」と問い、彼女が「その代わり、私がいるはず。」と答えるシーンがあるのだけれど、"That's it!"な映画だった。


「私の人生なのに傍観者で脇役しか演じられない」わたしがやらかしながらも人生をつかんでいく様子は、『フランシス・ハ』や『セレステ∞ジェシー』を思い出したりも。


こういう映画は主人公の魅力、主人公を好きになれるかが作品のそれに直結すると思うのだけれど、ユリヤ…好きになっちゃったのよね……。「わたしはあなたの魅力わかってるよーーー!」とスクリーンの外から何度も声をかけてあげたくなってしまった。結婚も出産もしてしまったわたしだけれど、メンタルはおそろしいほど変わらない。書店で働いていたこともあるし、家に帰りたくない時もあるし、いまだに人生の迷子。そんなわけで、ユリヤの身勝手さの描かれ方の豊かさに本当にぐっときてしまったし、自分もがんばろうという気持ちになりました。

あと、その服どこで買ったのか教えてくれんか?ってなるほどファッションがツボでした。


だいじなできごとは準備も心構えも間に合わずに過ぎてしまうもの、という事象も各登場人物を通してくり返し描かれていた。観終わった後、その時!ジャスト欲しいもの!が来る、という幻想と折り合いをつけて、でも自分をあきらめず現実をやっていく、という話を最初からずっとしていたんだな、と思いました。

ヨアキム・トリアー監督はインタビューでも「個人としての意識を、自分がいる集団とどう擦り合わせていくか」「夢と現実に折り合いをつける」「“時間と存在”は、まったく別のもの」など心をぶっ刺すパンチラインを量産。「プレッシャーで行き詰まった都会っ子たちの物語」を描きつづけている監督のようなので、過去作も観てみたいし、次作も楽しみです。

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★★★★