ケイコ 目を澄ませて


逃げ出したい、でも諦めたくない
愛想笑いが嫌いで嘘のつけないケイコ
耳が聞こえない彼女の心は‟雑音”だらけ。


監督・脚本:三宅唱
原案:小笠原恵子
脚本:酒井雅秋
撮影:月永雄太
編集:大川景子
照明:藤井勇
録音:川井崇満
美術:井上心平
装飾:渡辺大
衣裳:篠塚奈美
ヘアメイク:望月志穂美、遠山直美
ボクシング指導:松浦慎一郎
手話指導:堀康子、南瑠霞
手話監修:越智大輔


三宅唱監督はやはり街映画の名手だな、と。入り組んだせまい路地と高架下と河川敷。わたしは東東京に住んでいるので、この映画に映しとられた風景にまずぐっときてしまった。

音が豊かな映画でもある。劇伴もなく、主演の岸井ゆきのさんはほぼせりふがないのに、街の音、ミットを打つ音、目線や手話など、音が雄弁に立ち上がってくる。

耳が聞こえないボクサーというところにフォーカスせず、日常を積み重ねた先に確かな成長があるのも良かった。岸井ゆきのさんのコンビネーションミットは、「ただただ楽しい!」がストレートに伝わってきて感動した。

最終的に目指すところが試合だったとしても、好きなものに向かう時の原点ってこういう瞬間だよな、と。そこから少し離れたくなる時やまた戻りたくなる時、続けていてよかったまたがんばろうと思う時が、全くドラマチックに描かれていないのだがしみじみ良かった。


★★★★