少女は卒業しない


あの頃、ここが世界のすべてだった
青春小説の名手・朝井リョウの原作を映画化
卒業式までの2日間を描く、恋する少女たちのさよならの物語

監督・脚本:中川駿
撮影:伊藤弘典
編集:相良直一郎
美術:宍戸美穂
衣裳:白石敦子
ヘアメイク:杉山裕美子
助監督:中里洋一
音楽:佐藤望
主題歌:みゆな
原作:朝井リョウ


娘の卒園式を控え、「式だるっっっ…誰か式が良いものだと思わせてくれんか……?」という気持ちになり鑑賞。謝恩会関連の鬼LINE通知を切って(しかも在宅勤務をごまかして)、青春映画なんぞ観ている社会不適合者のわたしを許してほしい。(でも、ちゃんと「式って良いね!」という気持ちになりました!ありがとうございます!)

まず、『桐島〜』並みにスターを輩出しそうな映画で、役者陣のきらめき*1だけでもどきどきわくわくしてしまった。原作からの脚色がすばらしい点も『桐島』と同じで、朝井リョウの映画化され力よ!

卒業式前日〜当日の様子を、4人の少女の視点から、伏線を丁寧に回収しながら描いていく。とても繊細な描写がしずかな感動を積み重ねていき、自分でもずっと忘れていた記憶や感情が鮮明によみがえってきてびっくりした。
キャストはみんな良かったけれど、とくに河合優実は圧倒的で、彼女を見て一歩を踏み出す図書室の子のエピソードと併せて泣きました。


青春映画って製作しているのは中年なので、甘酢に思い出補正するのはもちろんだけど、逆に学校をすこし過剰に戻りたくない「地獄」として描く傾向があるような気がする。わたしも「楽園」でぬくぬくしていた学生だったくせに、ちょっとそんな風にすかしていた時期もあった。今年は年始に久しぶりに同窓会もあったりして、一周回って「やっぱり良かったよな」とちょうど思い直していたタイミングだったのだ。

この映画はその甘酢や地獄がかなり抑制されたトーンで、とても自然に描かれていて、観ているうちに、自分も卒業式で「卒業したくなーーーい!」と笑っていたこと、第一志望に合格したら大好きなおじいちゃん先生から愛用の英語の辞書をもらう約束をしていたこと*2、友だちや後輩と撮った写真、書いてもらったメッセージのペンの色なんかがブワーッとよみがえってきて、「あ、わたし学校好きだったんだな」と素直に思ってしまった。
せまい世界は地獄だけど、可能性をつぶしていたのは自分自身だったりもする。それもこれも全部卒業してわかること。

ただ一点。わたしだけだと思うのですが、佐藤緋美のエピソードだけが解釈違いで……。わたしは最後まで刹那四世をまっとうするひとをこそ愛すし、もしそれを突破するとしたらLauryn Hill並みのアカペラが必要だと思うので。高校生時代の自分が軽音部部長のような立ち位置だったからこそ余計に。(キャラは圧倒的にバスケ部部長の相棒なんだけど。)

ちなみにこの相棒役の坂口千晴さんの演技が本当にいきいきとしていて魅力的で、もっと観たい!ってなったし、近日中にブレイクしそうな気がしてわくわくしました。


★★★★

*1:窪塚Jr.が体育座りしている際の座高の低さにわたしは驚愕したよ!

*2:今でも実家に大事に保管してある