SHE SAID/シー・セッド その名を暴け


世界中の#MeTooに火をつけた1つの記事
衝撃のスクープサスペンス、解禁ー
ベストセラー回顧録の映画化

監督:マリア・シュラーダー
脚本:レベッカ・レンキェビチ
撮影:ナターシャ・ブライエ
編集:ハンスヨルク・バイスブリッヒ
美術:メレディス・リッピンコット
衣装:ブリタニー・ロア
音楽:ニコラス・ブリテル
原作:ジョディ・カンター、ミーガン・トゥーイー


原作は読んでいたのですが、公開時タイミング合わず。妹と上半期よかった映画の話をしていたらまっさきに挙げてきたので、「やっぱり観ておくべきだったか…」と後悔。本当に感動しました。

ものすごく優れた映画化だった。原作ももちろんおもしろくてスリリングだし、映画でも展開は忠実に再現されているのだけれど、やはり本人による著作と俯瞰で捉えたドラマでは印象が変わってくる。映画では登場人物や#MeTooに至る流れを、ものすごく広い射程で、それでいて血の通った身近な物語としてとても丁寧に描いていて、観ていてずっと泣きそうだった。

まず、実生活でも友人であるというキャリー・マリガン×ゾーイ・カザンのコンビ最高か……!この二人の実在感がすごい。二人とも娘をもつワーキングマザーであり、家族とのなにげない日常の描写だけで、これ以上プロミシング・ヤング・ウーマンの未来が奪われないよう闘おうとする強い意思がひしひしと伝わってくる。


他の登場人物にも一人たりとも無駄がないのがすばらしい。同じ女性でもそれぞれの立場や意識はまったくちがう。お互いに苛立ったり誤ったりもする。それでもこの映画を観ていてわきあがってくる感情は、シスターフッドだと思う。編集局次長はおそらく女性のキャリアを切り拓いてきた礎的な存在であろうし、ミラマックスの財務責任者の妻など、1シーンしか出てこないが、実際彼女のような存在がMeTooムーブメントを後押ししたと思う。女性たちが産後鬱や乳がんなど女性特有の問題に苦しむ描写も効いていた。

次長、めちゃくちゃおしゃれで、かっこよ!なにも説明はないけれど、部下たちを帰らせ一人残業する姿ひとつで、彼女の人生が伺える。

男性もそれぞれの立場でどのように身を処すかが、とても繊細に描かれていてよかった。当たり前のように家事や育児を担ったミーガンやジョディの夫たちも間違いなく影の立役者である。

映画自体はとても抑制されたトーンで、同種の題材を扱った『スポットライト』『ペンタゴン・ペーパーズ』に通じるいぶし銀の出来。直接的な性描写はないのに、充分恐怖と醜悪さを感じられるのも見事だった。


★★★★★