煙か土か食い物 / 舞城王太郎


これはマイケル・ギルモアの『心臓を貫かれて』にインスパイアされたんではないか、と思った。家族の愛憎、昏い血統、暴力の連鎖、4人兄弟、悪のカリスマ次男の暴走―。ただあちらはノンフィクションで、「何もよくなんかならない。絶対に。絶対に何もよくなんかならない。」という筆者(4男坊)の絶望的ひとりごとで幕を閉じるのに比べて、こっちはエンタテイメント。シロー(4男坊)のトラウマが昇華される。あと爽快な暴力(兄弟ケンカ・悪者退治)と陰惨な暴力(丸雄とニ郎)の両方が描かれていてよかった。


ミステリーとして見立て殺人ネタもおもしろい。


舞城さんは映画を使って、状況を描写してくれるので、とってもわかりやすい。今回は『ボーン・コレクター』、『羊たちの沈黙』、『ネゴシエーター』、『マトリックス』などなど。