北極百貨店のコンシェルジュさん


その想いは、ずっと続く。ずっと繋がる。

監督:板津匡覧
脚本:大島里美
作画監督:森田千誉
美術監督:立田一郎
撮影監督:田中宏侍
編集:植松淳一
音響監督:菊田浩巳
音楽:tofubeats
主題歌:Myuk
原作:西村ツチカ


息子(4才)昼寝爆睡中に娘(小2)と。
お客様はすべて動物である北極百貨店。春夏秋冬を通じて新人コンシェルジュ秋乃さんの成長を描く。やわらかくカラフルな色調と、『グランド・ブダペスト・ホテル』を思わせるようなおしゃれなデザインが目に楽しい。
わたしはもともと百貨店にどこかなつかしくさみしいイメージがあって、テーマと舞台の相性が抜群だと感じた。

娘は、序盤の秋乃さんの危なっかしさにハラハラしたようでたびたび目を覆っており、「森さんがすき…」と安定感を求めていたけれど、成長していく秋乃さんの姿に「がんばったね!」などと声かけするように。

物語は、絶滅種である「V.I.A」とのエピソードを中心に進むのだけれど、娘が一番好きな動物はニホンオオカミなので大喜び!

終盤、北極百貨店が「人間が絶滅させた動物への贖罪」として存在することが明らかになり、おとなとしてはスッと背筋が冷える思いもあったのだけれど、娘的には彼女が絶滅種に対して抱いてきた感情とスッとリンクしたようで、しみじみ感じ入っていた。

あとは、なにしろtofubeatsの音楽が良い!『寝ても覚めても』の時もびっくりしたけれど、本当に映画の本質を射抜くような音楽づくりをするなぁと感動しました。


★★★★

Chime


監督・脚本:黒沢清
撮影:古屋幸一
編集:山崎梓
助監督:成瀬朋一
照明:酒井隆英
録音:反町憲人
美術:安藤秀敏
スタイリスト:清水奈緒
音楽:渡邊琢磨


natalie.mu


恐怖に耐えきれる自信がなかったので、夫についてきてもらいました。
無添加濃縮黒沢清ーーー!3大怖いものを詰め合わせないで!わたしたちがふだん意識の埒外に置いてなんとか日常生活を送れている、その薄皮一枚をはがさないで!というファン垂涎の短編でした。

  • 半透明の遮蔽物と蠢く影
  • 噛み合わない会話
  • 伝播する狂気
  • なんかいやな地形
  • 全てが少しずつ暗い/早い/多い/大きいなど「ずれ」で感じる不穏と違和感
  • 主人公もサイコパス
  • もう料理教室に行ってみたい気持ち0

ゾッとしつつもけっこう笑ってしまうシーンも多かった。ある意味一番読めない松岡の田代に対する反応や地獄の面接、なんでまたこの料理教室に来れるんだよ!という女性の顛末。

一番怖かったのは妻のシーンかな。最も安全であってほしいはずの家庭、最も心が通じていてほしいはずの相手。だからこそ感じる圧倒的な恐怖。こんな顔、映しちゃダメだって……。


一方で橋を駆けるシーンの映画性にしびれたり、と監督の力量に圧倒させられっぱなしでした。45分でここまで作家性を魅せられる監督は稀有なのではなかろうか。一生ついていきます!


moviewalker.jp

濱口監督との対談、おもしろすぎるよー。来月には早くも新作『Cloud』が控えていて、楽しみすぎる…!


★★★★★

インサイド・ヘッド2


どんな感情も、あなたの宝物になるー
誰にでもー<感情の嵐>は訪れる。

原題:INSIDE OUT 2
監督・原案:ケルシー・マン
脚本・原案:メグ・レフォーブ
脚本:デイブ・ホルスタイン
編集:マウリッサ・ホルビッツ
音楽:アンドレア・ダッツマン
製作総指揮:ピート・ドクター、ジョナス・リベラ、ダン・スキャンロン

夫&娘(小2)と鑑賞。夫もわたしもピクサーの中で『インサイド・ヘッド』が一番好きなので、すごく楽しみにしていました!娘も1履修済。

人間の脳内を見事に具現化し、引っ越しという一大イベントを通して、11才の少女ライリーの心の成長を描いた傑作1から2年。13才になったライリーになんと思春期アラート!感情チームに新たに「シンパイ」「イイナー」「ダリィ」「ハズカシ」が加入してくる。前作が家族との関係にフォーカスして描かれていたのに対し、今作は親元を離れたキャンプを通して友情関係にフォーカスして描かれている。


2もすばらしかった!まずは、とにかく人間の脳内/心理の描写がよくできている。前作の”Islands of Personality” "Train of Thought" "Imaginary Friend"などにつづき、 今作は「自我の彫像」「秘密の金庫」「皮肉の裂け目」「アイデアの嵐」などが見事に具現化されている。ヨロコビの統率により"I'm a good person"という自己肯定感が確立されるシーンだけでも充分うつくしいのに、この作品はそれを超えていく。多様性、心の豊かさ、人間性の複雑さについての讃歌になっていく。(ときには自己嫌悪も必要だということ)

今作の肝は、ヨロコビに代わって操縦桿を握ることになるシンパイのキャラクターだと思う*1。本当に好きなアーティストを封印し、イケてると思われる回答を必死で考えようとするライリーの姿。笑ってしまうと同時に、途方もなくいじらしい気持ちになってしまう*2。とくに、熱暴走のような状態になってしまったシンパイの後ろ姿は、母性弱者のわたしでも思わず抱きしめたくなってしまった。そこから大好きなホッケーに向けて心を込めて操縦桿を握るのがヨロコビだということー、そのシーンのうつくしさに号泣してしまった。


ライリーを通して我が子を、また未来の我が子の成長を想像する。1も2も子どもといっしょに何度も観れたらいいな、と思う作品。コーチにあれだけ厳しく注意されても、おふざけの島が壊れないライリーが大好きだよ。


★★★★★

*1:夫はもちろんダリィが好き

*2:まだヨロコビ(もしくは衝動!?)が操縦桿を握っている娘は、シンパイのアイデアに何回も「ぎゃぁ~~~やめて~~~」となっていたが

名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)


ついに明かされる、”キッドの真実”ー

監督:永岡智佳
脚本:大倉崇裕
総作画監督・キャラクターデザイン:須藤昌朋
美術:福島孝喜、柏村明香
撮影:西山仁
編集:岡田輝満
音楽:菅野祐悟
主題歌:aiko
原作:青山剛昌


前回、娘と『化け猫あんずちゃん』を観た時に、劇場で「え!?コナンまだやってる!?4月公開なのに!?」となり、改めて鑑賞の運びとなりました。

娘(小2)はこのところコナンと鬼太郎ばかり見ているのですが、当方、コナンは連載初期にサンデーでチラッと読んでいて、登場人物がなんとなくわかる程度。事前にNETFLIXで娘と『ゼロの執行人』を予習したのですが、終始「きみらめちゃくちゃするな……」という心の声が何度も漏れだす始末。「劇場版コナンを100%楽しむにはなんらかのマナーが必要なのではないか?(ハイロー応援上映的な)」という気がして、「劇場版 コナン 楽しみ方」でググったりと不毛な努力をしながらいざ劇場へ。

結果、おもしろかった!!!わたしは怪盗が好きで、今作はキッド(&平次)活躍回だったので、楽しかったです。東西の名探偵、怪盗、剣士、秘宝、刀剣、土方歳三、北海道観光にラブコメ……。もう書いていてクラクラしてくる、『密輸 1970』もびっくりのメガ盛り

セスナの上で殺陣が始まった時には、「これうっかりトムちんが観たら取り入れちゃうやつじゃん…」と実写化への思いが止まらなくなってしまいました。実写にしたら何味なんだ…という珍味、エンディングにaikoが流れ出した瞬間に極まれり。不思議と多幸感すら感じました。

奇しくも、娘はそのまま北海道へと旅立っていったので、北海道旅行の予習にもなって良かったなぁと思いました。(なんだこの感想)


★★★★

ホーム・アローン


原題:HOME ALONE


夫が1週間のアメリカ出張へと旅立っていった。なんかパーッとお留守番映画でも観るか!と思い、録画していた金ローからチョイス。娘(小2)&息子(4才)といっしょに爆盛りポップコーンをおともに鑑賞。

いや〜、ウケたね…!「親に置き去りにされる」「自分ひとりの留守中に泥棒に狙われる」というシンプルすぎるほど子どもの恐怖を突いているせいか、はじめは予想以上にこわがっていた子どもたち。「どうやって泥棒倒すの?」「ケビンが無事かどうかだけは教えて!」としつこく騒いでいましたが、撃退シーンでは喝采

子どもはやっぱり「クソバカな大人」VS「かしこい子ども」が観たいんだなぁぁぁ!このご時世コンプラ配慮のためか、ここまでストレートに子どもファーストで痛快な作品はないような気がする。

大人の目線で観ると、改めて泥棒コンビの演技が超絶上手い。子どもたちが気持ち良く笑えるかどうかは、ほぼほぼこの二人の手腕にかかっているのがわかる。誰よ!?ジョー・ペシ&ダニエル・スターンだよ!!名優名優名優!!!

化け猫あんずちゃん


また、どこかで会える?
「母さんに会いたい。」
母を亡くした少女と共に向かうのは地獄の果てー

監督:久野遥子、山下敦弘
脚本:いまおかしんじ
キャラクターデザイン:久野遥子
作画監督:石舘波子 中内友紀恵
美術監督色彩設計:ジュリアン・ド・マン
撮影監督:牧野真人
撮影:池内義浩
編集:小島俊彦
スタイリスト:伊賀大介
音楽:鈴木慶一
主題歌:佐藤千亜妃
原作:いましろたかし


今年も娘(小2)の夏休みがスタートしました!というわけで、初日はさっそく有休を取って映画館へ。山下敦弘監督版『千と千尋の神隠し』かな?くらいの気持ちで観に行ったのですが、『ゲ謎』につづきまたしてもごめーーーん!思いのほかハードなやつだったわ……。(下調べしろ!)

以下、ネタバレ

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鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎


原点にして最恐ー

監督:古賀豪
脚本:吉野弘幸
キャラクターデザイン:谷田部透湖
撮影監督:石山智之
美術監督:市岡茉衣
音楽:川井憲次
原作:水木しげる


楽しみにしていた花火大会がゲリラ豪雨で中止になってしまったため、落ち込む娘(小2、最近鬼太郎とコナンばかり見ている)をはげまそうと家族で鑑賞。

いや、ごめん!これだいぶ難易度高いよね?因習村ホラー+妖怪+戦争体験という日本の闇と「こわさ」の教本みたいになってるじゃん…。わたしが子どもの頃なら絶対に観れないんだけど……。娘は一人でトイレに行くのを嫌がるほどのこわがりなのに、鬼太郎やコナンは全然平気なの意味がわからない。息子(4才)はとにかく狂骨がこわかったようで、出てくるたびに机の下に隠れていました(保育園教育の賜物)。
夫は好きな要素が詰まっているため、夢中になって鑑賞。説明要員わたしだけじゃ足りないのよ…。時貞翁がやったこととかだいぶ説明しづらいわ。

とはいえ、年代を超えて伝わる時貞翁の最悪さは一点の曇りもなく。ゲゲ郎&水木のコンビ、敵/守られるべき者が誰かが明確なので、子どもたちも意外なほどのめり込んで楽しく観ることができたもよう。娘は鬼太郎誕生エピソードを知っていたので、エンドロールも大喜び。ただ、二人ともときちゃんの顛末だけは可哀想すぎて納得いかないようです。

全編通して「未来」という言葉が何回も出てくるのだけれど、ときちゃんは「存在したことを忘れない」という約束で満足するしかない。娘の「ときちゃんはなんのために生まれてきたの?」という質問には言葉が詰まってしまった。


★★★★