東京バレエ団『上野水香オン・ステージ』


Kの『眠れる森の美女』で「バレエ鑑賞良い~~~!」となったあと、「さて、次は何が観たいかな~」という時、「ボレロ観たい絶対絶対!」と狙いを定めておりました。(ミーハーすぎてつらい。)『ボレロ』を踊れるのはモーリス・ベジャール・バレエ団に許可されたバレエ団とダンサーのみ。日本だと東京バレエ団で、メロディを踊ることを許されているのは上野水香と柄本弾だけ。この公演のチケッティングの少し前に、なんとその上野水香様が紫綬褒章を受章することが発表されたため、がぜんチケッティングに緊張感が…。案の定、母と妹も「できたら観たいな…」と言い出したのですが、なんとかがんばって3人分のチケットをゲットすることができました。

さて当日。紫綬褒章受章の影響もあるのか、老若男女が幅広く観に来ている印象。とくに男性の多さは今まで観たバレエ公演の中でまちがいなくトップでした。おそらくバレエを観たことない人や本来は興味のない人もいるんだろうなぁ。まだバレエ鑑賞に慣れていないわたしもオペラグラスを忘れてしまい痛恨。

開演。まず、「オン・ステージ」ってなによ?と思うでしょうが、まさに「オン・ステージ」でしたね!ミニマムかつスタイリッシュなセットで、上野水香さんの踊りをひたすら堪能できるつくり。

第一部は『カルメン』。アロンソ版はじめて観たのですが、美術もあいまってコンテっぽくて楽しかったです。上野さんのコケティッシュな魅力が全開。本当にスタイルが異次元すぎて「語彙消失とはこのことか…」と思い知りました。顔小さい!手足まっすぐ!細い!長い!もうずっとこのワードが脳内無限ループ。その手足を限界まで使い切って踊っているのだから、「うそでしょーーーながーーー」とまず感動してしまいました。また、この長いアームスの軌跡のうつくしさと言ったら……!踊りながら図形を描いているよう。動きの始末がはっきりしていて、振りがとても正確なので、「これはこういう振りだったんだなぁ…」と改めて振付をフレッシュに感じる瞬間があり、振付師への敬意を感じました。ホセ役の柄本弾さんのエモさは言わずもがな、運命(牛)役の伝田陽美さんのキレッキレの踊りもとてもすてきでした。

第二部は東京バレエ団の抜粋『ドンキ』。運営の推しはこの子でっせ~!がはっきりわかるところが伝統芸能~~~!を感じました。(きっと歌舞伎とかもそうだよね?)欲を言えば一日目の秋山瑛さんを観てみたかったのですが、涌田美紀さんのキトリは溌溂としていて似合っていました。バジル役の池本祥真さんはしなやかでのびやかで華があって、誰が観ても次のプリンシパル!という感じで眼福でした。
Kと比べると団員の層の厚さや群舞のレベルの高さが目立ち、個性や外連味が楽しいK、技術とアート性の東バというカラーなのかな?と感じました*1。次は新国立劇場バレエ団とも見比べてみたいです。

再び、水野&柄本コンビ登場でローラン・プティ の『タイス』。しっとりと染み入るような詩情豊かな作品。とくにスカートのひるがえりが最もうつくしく見えるように計算されたような、コントロールされた回転がすばらしかったです。

そして、第三部は待ってましたの『ボレロ』!15分休憩で『タイス』から切り替えるの神業!!本当にこの曲とこの振付かっこいいよーーー!!!メロディの踊り、リズムたちとのバランス、観ている側の状態で、受け取り方が無限になると思うし、祝祭感といい「好き」が詰まっている作品です。

まず、あの赤い舞台に立っているだけでオーラを放つ上野さんの佇まいとパーフェクトな肢体よ!選ばれし者しか上がれないということを観客に一発で納得させてくれます。やわらかくしなやかな出だしから、徐々にリズムに押し上げられるように激しくパワーに満ちていく踊り。『ボレロ』だととりわけ水野さんの手の大きさ/指の長さも光り、全身から繰り出される明晰な振りが、魔法使いのようにリズムたちを指揮していくように見えました。『昴』でも『ボレロ』は特別なナンバーとして描かれているけれど、やはりちょっと超常的で魔術的な、ドラッギーな力のある作品だなぁと体感しました。映画を好きでいると「作り手と作品を分けて考えるべきか」と悩む状況に立たされることがあるけれど、途中「上野水香さん本人の人間性がどうであろうと関係ない!」とはっきりと思ってしまった瞬間がありました。最後はみんなスタンディングオベーション

もうすでにまた観たくなっている自分がいるもんね。第二子誕生以来ひたすら利便性重視でワンレンボブにしているけれど、一瞬前髪パッツンロング目指したい気持ちが芽生えたもんね(影響されやすすぎる)。そんな波動を浴びたおかげか、噓みたいだけど、翌朝顔がツヤッツヤになっていました。1977年生まれだなんて信じられないし、末永く踊りつづけていただきたいです。

追記:やっぱり!祝!
thetokyoballet.com

*1:大昔、なぜか東京バレエ団の子たちとクラブで遊んでいた時期があったので、もっとそんな話聞いておけばよかったな