K-BALLET TOKYO『熊川版 新制作 眠れる森の美女』


結婚してから移り住んだ町には、なぜかバレエ教室が多いのです。度々看板を目にしていると、『羊たちの沈黙』ばりにむくむくと欲望が発動し、思い切って近所の教室でバレエを習いはじめました。2度の妊娠/出産でちょいちょいブランクをつくりながらも、下手の横好きで細く続けています。

そんなわたしですが、今まで全然バレエを観に行っていなかったんですよねー。ダンスを観るのは大好きだけれど、バレエを観に行くのって色々と敷居が高い。チケットも高いし、みんなどうやって情報収集しているんだろう?バレエ仲間はそもそも鑑賞するのが好きで習いはじめた方も多く、感想を教えてくれたりするのだけれど、わたしはダンサーやバレエ団の知識が全くなく、とっかかりがありませんでした。

そんな中、プロモーションが上手いKバレエは、こんなわたしにも情報が入ってきた…!プリンシパルの面々も、正統派!というよりちょい癖強かつスタイリッシュな顔ぶれのように感じて、「わぁ~!生で観てみたい~!」とミーハー心が爆発!
上背のある日髙世菜さんのカラボスが絶対に観たくて、あとはおしゃれ番長・飯島望未さんのオーロラ!この組み合わせが観たいよ絶対絶対!で、即チケットを取りました。(その後、さらなるプロモーションがかかり、チケットが全公演完売・天皇皇后両陛下鑑賞となったので、早めに取っておいて本当によかった。)

TPOとかよくわからないけど、なぜかイキったおしゃれをしたくなるのがバレエ鑑賞。自分が持っている中で一番じゃらじゃらしたピアスとマルジェラのブーツで出かけます。会場に到着すると、やはりイキったおしゃれをしている人が多く、和装の方もちらほら。わたしの隣の席の女性は、蒼井優のような雰囲気で、黒のマキシワンピ(イメージ、ヨウジヤマモトとかイッセイミヤケ)。これこれこれ~~~!

開演。まずは美術がすごい~~~!ヒグチユウコさん的な世界観を思わせるような美術で舞台が縁取られている。奥行きと立体感があるセット。さっそく双眼鏡を取り出し、月や太陽、カエルや赤ずきんなどをじっくり鑑賞。
衣装も美しい!今の日本のバレエが全体的にそうなのかもしれませんが、日本人に合った色味~~~!わたし自身、欧州の肌色基準の明るい色が全く似合わないので、レオタードやタイツですら「こんな色着れないよ…」と思うことが多々あるのですが、シックで美しい色が舞うのを観ているだけで楽しかったです。デザインも本当にすてき。


そして熊川哲也による大胆改変。熊哲が『眠り』のどこを嫌いなのかがわかりやすすぎる改変で、ちょっと笑ってしまいました。長いの儀礼的なの退屈、王子と姫にも人格を、戦いは思い切り盛り上げてー。運命、古典、豪華絢爛、といった要素は薄くなり、元々『眠り』が好きな人からは不満が出そうだな…とも思いつつも、王子と姫の恋がフレッシュに描かれていて良かったです。黒ずきんの役回りなども、あまりバレエに親しみがない人も楽しめるサービス精神満点の演出をしていたと思います。

ダンサーは比較対象のストックがないので何とも言えないのですが、やはりプリンシパルの方はオーラや輝きが違うな!とびっくりしました。発光して見える…というのは大げさではなく、おそらく顔や上半身へのライトの当て方も神業なんだろうな、と。飯島望未さんは一際華奢で「顔ちっっっちゃ!体うっっっす!」となったのですが、ハードワークなオーロラを可憐に演じていました。花束が似合う!日髙世菜さんは悪の魅力満載。カラボスの衣装が一番好きだったけど、まぁ似合うこと似合うこと。とにかく手足が長くて映える!かっこよ!カラボスが登場する度にワクワクしました。石橋奨也さんのデジレは上品かつ感情表現が豊かで、リフトなど安定感がすばらしかった。堀内將平さんの宝石は華があって目を奪われました。

これはいろんな組み合わせを観てみたいし、当たり役とか発見したいなー!となってしまい、やはり歴史の長い沼はこわいな…と思いました。あとは、あまりにもふつうの感想になってしまうけれど、才能と努力の結晶を観るのはすごくうれしいし楽しいし元気がもらえるな、と思いました。