キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン


原題:KILLERS OF THE FLOWER MOON
監督・脚本:マーティン・スコセッシ
脚本:エリック・ロス
撮影:ロドリゴ・プリエト
編集:セルマ・スクーンメイカー
美術:ジャック・フィスク
衣装:ジャクリーン・ウェスト
音楽:ロビー・ロバートソン
原作:デビッド・グラン


もう予告観た時点で、「どうせ長くてこってりしててめちゃくちゃおもしろいんでしょうよ!」と思っていましたが、その通りでした。冒頭からもう強固な「映画力」でがっちり観客をつかんで離さない巨匠の手腕!きもちよ~~~!スピルバーグ『フェイブルマンズ』と同年公開だなんてなんというぜいたく!

まず、最初からおもしろかったのが「金」の描写。国籍・人種問わず、金を持った人間がやることはなぜか定型になってしまう。車、宝石、豪邸、家事の外注、政治。そしてそこにまつわる利権にはたくさんの人間が「組織/家族」となって群がってくる。
しかし、登場人物は誰も「幸せ」には見えない。「金」を手に入れたはずのオセージは、自由に金を使うことができず、洋式の食生活による健康被害に苦しみ、命の危険に怯えている。オセージから奪おうとする白人側もキングに支配され、またそのキング自体も「支配」や「権謀」自体が目的になってしまっているように見え(演じたデニーロもキングの行動原理がわからず、トランプをイメージして演じたそう)、ずっと不穏で緊張を強いられる場面が続く。

事件自体がショッキングなので、当初の予定通りFBI捜査官トム・ホワイトを主役に据えてもおもしろくできたとは思うのですが、しょうもない甥アーネストを演じたいと言ったディカプリオ。好き。十八番である俗物芸。リアルな人間がこんな絵に描いたようなへの字口できるんだ!?という感動。アルピー平子りすら感じさせる演技、笑っちゃったよ……。
やはりアーネストを中心に持ってきたことで、より「幸せ」とは?と考えさせられたし、アーネストとモリ―の関係一つとっても、お互いがどこまで「わかっていた」かを明示しないの、本当に「映画」だよな~!としびれました。最後の解答もしっかり間違えるアーネスト*1は本当にダメだなぁと思いつつ、なぜか逆に彼の「嘘のつけなさ」と、たしかに「愛」があったことを確信でき、その上でのモリ―の選択はさらに重く感じさせられる。聡明なモリ―。

長尺をずっと下支えするロビー・ロバートソンによるすばらしいスコアも、『DUNE』を手がけたジャクリーン・ウェストによるおしゃれな衣装も最高でした!ディカプリオが着てたパジャマ欲しい!


★★★★

*1:その瞬間、となりの席のおじさんは「あちゃ〜…」と言っていました