エターナルズ

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地球滅亡まで、あと7日。
アベンジャーズ/エンドゲーム」は、始まりに過ぎない

監督:クロエ・ジャオ
脚本:クロエ・ジャオ、パトリック・バーリー、ライアン・フィルポ、カズ・フィルポ
撮影:ベン・デイビス
編集:クレイグ・ウッド ディラン・ティチェナー
美術:イブ・スチュワート
衣装:サミー・シェルドン・ディファー
音楽:ラミン・ジャワディ
原案:ライアン・フィルポ 、カズ・フィルポ


『ノマドランド』を観た時点では、正直クロエ・ジャオ監督のことが好きかどうか判断できず、初報でも「クロエ・ジャオ監督がMCU…?」と戸惑いが大きかった。しかし、公開が近づくにつれ、「BTSの『Friends』が使われる」「蔵馬推しでキャラに霊丸打たせてる」「仙道推しでノマドランド撮影中に生活してたヴァンにAKIRAと名づけた」など出るわ出るわオタク謳歌エピソード。深遠な映画を撮る監督という印象だったけれど、もしやただただ推しかぶりの人…なの……?

そんなこんなで、満を持していつメンとアフタヌーンティー@新高輪プリンス前に鑑賞。zoom会はしていたものの、一年半以上ぶりの対面でIMAXMCUの新作を観れるなんて…、感無量。しあわせでしかない。
そして映画自体もとても良かった!大好きでした!ずっと「これわたしにはめちゃくちゃ刺さるけど、正直他の人やMCUファンはどうだろう?」という思いは拭えなかったけれど。人種や性別で語りたくないけれど、アジア系女性のオタクにしか撮り得ないエモみが堂々と炸裂しまくっていて、感動しました。

まず、わたしが一番好感を持ったのは、『エンドゲーム』とほぼ裏返しの部分。*1ヒーローたちが「最大多数の最大幸福」に没しないで、極めて個人的な考えや感情で自分らしい選択をおこなっているように描かれていたところ。『エンドゲーム』ではヒーローたちがこれまでの行動原理を無視してでも、決められたエンドへ向かっていくのを見る違和感がつらかったけれど、『エターナルズ』のキャラたちの行動は、自分はその選択をしないにしても、「このキャラならこの行動を選択するよな」と理解も納得もできて全くストレスがなかった。*2

そして、日本の漫画などではよく見かけるものの、ハリウッドヒーローものでは今まで登場してこなかったような、キャラクターや設定、関係性のエモさ・フレッシュさが刺さる!どんなに間違っていてもみんなティンカー・ベルのことは嫌いになれないし、エプロン姿でパイを焼くマブリー(マブリーは映画の外でも女性への触れ方が配慮と慈愛に満ちていてうっとりする)とバレエジャンプ&袈裟斬りするアンジーには萌え死ぬ。


コメディリリーフが見せる「自分のポリシーのために他人を傷つけることはしない」という不参加や、本来最も王道エリートヒーローであるはずのキャラの苦悩と選択。ファストスの変化は歴史そのものを内包しているかのようだし、女性が速さで男性の力に対抗し得るというアクションシーンにどれほど勇気をもらえることか。どのキャラも魅力的だし、どのキャラをペアにしても関係性に思いを馳せられる。(どんどん二次創作してね!というお気持ちを感じる。)(わたしはドルイグ×マッカリ推し。かわいいー)


とにかく観客がエモや解釈を乗せられる余白が大きく取ってある。(さすがオタク…。)
例えば挿入歌に使われたBTSの『Friends』。この曲はグループ7人ではなくBTS内のクオズと呼ばれるペアの曲だ。クオズは同学年ではあるものの性格やスタイルが全く違い、衝突しながらもお互いの理解や歩み寄りによってソウルメイトとまで称されるようになったペアで、『Friends』はその二人が”Hello, my alien””ぼくらはおたがいにMystery”とかけあいながら、「いつかこの歓声が止むときも ぼくのとなりにいてくれ」とかなり重めの友情を歌う曲なのだ。*3
使われているのはライトなシーンだけれど、きちんと「友だち」文脈で使われているし、そもそもエターナルズ自体、キャラや考え方が全く異なるメンバーたちが長い時間と労力をかけて唯一無二の関係性を築いたさまが完全に「クオズ」(でありBTS)で、勝手にエモくなってしまいました。


★★★★

*1:根にもちかたがえぐい

*2:ルッソズとは一致しなかった解釈が、クロエ・ジャオとは一致した思い!飲み会したい!

*3:しかも本人が作詞作曲というエモの特盛