怒り

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あなたは殺人犯ですか?
残忍な夫婦殺人事件から一年
犯人は整形し、逃亡を続けていた
そして現れた3人の謎の男
愛した人は殺人犯なのか?
あなたを信じたい――

監督・脚本:李相日
助監督:竹田正明
撮影:笠松則通
編集:今井剛
美術:都築雄二 / 坂原文子
衣装デザイン:小川久美子
音楽:坂本龍一
原作:吉田修一『怒り』


3つの交わらないドラマが、一篇の壮大な叙事詩のように紡がれていくさまは圧巻。そしてそこにからむ真犯人探しのスリリングさと豪華キャストによる迫真の演技合戦よ。映画化を知ったタイミングで、図書館で原作を予約していたのだけれど、結果間に合わなくて未読で鑑賞してよかったかも。

ひとを評価するときに、自分の直感や経験則で、「このひとはこんな感じのひとだろう」と型にはめて、信頼したり、あるいは少し侮ったり、という作業を誰しも日常的にやっている。そのことがとてもこわくなる映画だった。その評価はおおかた本人に伝わってしまっているし、その評価自体が根本から読みちがえている場合もあるのだ。

とくに印象に残ったのは、宮崎あおいが「わたしなんかが普通のひとと幸せになれるわけがない」とパートナーへの侮りを露呈してしまうシーンと、沖縄パートの登場人物同様に観客も侮っていたであろう少年が結果かます、というところ。侮って甘く見ていたひとが、期せずして頭をかち割ってくれる展開、好きなんだよな。

ひとと対等な関係を築くのって、自分を卑下しすぎて相手を尊敬しすぎてもうまくいかないし、その逆もまたしかり。自分も相手も受け容れて、なおかつお互いに尊敬するって、本当にむずかしいものですね。(小並感)

しかし、この映画がつーんとはくらったけど、自分のための映画って気は全くしなくて、「こういう時どんなきもちになればいいかわからないの……」って鑑後感が残りました。
「やっぱり素性の知れない相手を信頼はできないよ…」っていうみもふたもないこと思ってごめんな綾野。


★★★