ボレロ好きならそれは本家本元を観たいに決まってる!ということで、ラストに『ボレロ』を置いたBBL(Béjart Ballet Lausanne)のガラ公演へ行ってきました。


スケジュールが合う回で選んだのですが、メロディはエリザベット・ロスさん!上野水香さんが「(ベジャールの)直接の指導を受けたダンサーの中で、現在も現役で踊っているのはエリザベット・ロスさん、ジュリアン・ファヴローさんと私だけなのではないかと思います。」とお話しされている、御年56才のレジェンド。ベジャールのミューズを拝めることとなったのです*1。
1. ”だから踊ろう... !" by ジル・ロマン

コロナ禍の困難な状況のもとで“踊る喜び”を表現するために創作された作品。暗い影に覆われていくような背景が落ちると、色とりどり、様々なデザインの衣装がひるがえる。事前にはもっとストレートにポジティブなパワーや歓喜が表現されるのかと思っていたが、どことなくエキゾチックでオリエンタルな音楽やきっちりビートを拾う振付がだんだんクセになってくるスルメ的な作品だった。
あまり人種で分けたくはないが、やはり明らかに人種でダンスの個性やストロング・ポイントが違うのがおもしろい。長くてまっすぐな手足を活かした華と美貌の欧米系、キレとスピードのアジア系、エネルギーとエモーションの中南米系。また、パ・ド・ドゥ、パ・ド・トロワ、パ・ド・カトル…と様々な組み合わせの相性や相乗効果を観ることができて楽しい。推しの組み合わせ、無限大∞
わたしは、大貫真幹さんのダンスにハマってしまった。優雅さと独特の浮遊感が白眉。早くて難易度の高い振付になるほど、上半身が硬直しがちになると思うのだが、いつでも信じられないくらい上半身がやわらかく美しい。アジアびいきになってしまうけれど、端正な踊りの武岡昴之介さんとのパ・ド・ドゥ、シャープな踊りのイ・ミンギョンさんとのパ・ド・ドゥがそれぞれ息が合っていて、ペアでも推せる……となりました。
2. ”2人のためのアダージオ"ー『マルロー、あるいは神々の変貌』より抜粋 by モーリス・ベジャール

団の二大看板 ジュリアン・ファヴローとエリザベット・ロスが登場。銃殺される兵士に煙草をくわえさせる「死」。感動した……。まずジュリアン・ファヴローが登場した時から佇まい一つで映画すぎて…。ジュリアン・ファヴローはベジャールから「僕が見たいのは、ダンサーが踊っている姿ではなく、ひとりの人間が踊っている姿なんだ」と言われてきたそうだが、まさに!華やかでセクシー、でも憂いと茶目っ気が見える。そして、「死」を演じるエリザベット・ロス様のスタイリッシュさよ!!!魅惑する「死」におそろしいくらい知性が見え、それがとてもセクシーなのだ。好き好き大好きあこがれすぎる。衣装もめちゃくちゃおしゃれじゃないですか?赤毛ボブに赤スパンコール…すてき……。

また、長年共に踊ってきた2人の円熟味がすばらしく、本当に踊りを介して対話しているようですばらしかった。観ることができて本当に幸せ。
3. ”コンセルト・アン・レ" by モーリス・ベジャール

祝祭的ストラヴィンスキー・バレエ。群舞としてグラデーションになるような衣装が美しく、ハマればハウス的にじわじわテンションが上がっていく作品なのではないかと思う。ただ、今回中核を担ったソレーヌ・ビュレルとオスカー・シャコンのペアがどうにも踊りにくそうで、作品の真価を発揮しきれなかったように見えた。二人ともとてもスター性のあるダンサーだと感じたので、相性の問題かどちらかのコンディションか。ただでさえ超絶技巧かつ速いパが連続するので、ちょっとヒヤッとしてしまった。今回上階の席から鑑賞したので、隊形移動や空間構成が堪能できたのはとても良かった。
4. ”ボレロ" by モーリス・ベジャール

なんて力みのないメロディ。メロディがリズムを指揮しているとするなら、もはやエリザベット・ロスはリズムたちを踊らせるのに「力」は要らないと考えているように見えた。代わりに優しさや慈愛のようなものが伝わってきて衝撃を受けた。カリスマのイメージが強いメロディだが、こんな解釈もできるのか!と。女神というより地母神と表したくなるような空気感。
また、指先の先、つま先の先にまで力が宿るような踊りで、理想形の先を見るような思いでした。

若かりし頃は全く違うメロディだったと思うし、リズムとの関係も違っていたと思う。様々な年代の様々なダンサーによるボレロを観てきた方は感慨もひとしおだったのではないか。こればかりは現場で体感するしかない。どんな演目もそうだとは思うが、特にボレロは一回一回の奇跡のような巡り合わせが宝物になる作品なんだなぁと改めて感じた。

上野水香様の『ボレロ』を観て前髪パッツンロングにあこがれたわたしですが、おかげさまでワンレンボブに気持ちが戻りました!あとは赤毛だな……。(影響されやすすぎる)