サンキュー、チャック


平凡な男が辿った数奇な人生
世界の終わりに明かされる、愛すべき贈り物(サプライズ)とは?

原題:THE LIFE OF CHUCK
監督・脚本・編集:マイク・フラナガン
撮影:エベン・ボルター
美術:スティーブ・アーノルド
衣装:テリー・アンダーソン
音楽:ザ・ニュートン・ブラザーズ
振付:マンディ・ムーア
原作:スティーブン・キング


人生讃歌の方のスティーヴン・キング、という情報だけは得ていて、「好きそうだな…」という予感はあったのですが、まさに!
何を書いてもネタバレになってしまいそうなのですが、トムヒのダンスが炸裂したあとのナレーションがエモすぎてしびれました。

What he will remember, occasionally,

is how he stopped and dropped his briefcase

and began to move his hips to the beat of the drums.

And he will think

that is why God made the world.

Just that.

もうこれだけですばらしいってわかるでしょ?


以下、ネタバレ。





逆再生されるチャックの脳内の3章が、Walt Whitmanの“Song of Myself”という詩にうつくしく収斂されていく。先生がそっとはさんだチャックの頭の中に広がる宇宙。"A whole universe right between my hands." "You contain multitudes."


わたしがとてもうつくしいな、と感じたのは、人生最高の日が自分と近しい人との思い出ではなく、偶然居合わせたまったくちがう背景を持った人々によって織りなされたというところ。そこに前述のナレーションが重なるのだから、どうしたって泣いてしまう。それでいて、チャックは仕事も家族もきちんと愛した人だと感じられるのがなお良い。

チャックの人格形成や物語の伏線回収が詰まった第1章パートが終わったあと、改めて第3章を振り返ってみるとこわい。わかっている世界の終わりを待つあいだ、自分が出会った人々、知った国や都市や地域がどんどん崩壊し消えていく。脳腫瘍を患うチャックの脳内では、縁遠いはずの人たちが主演している。それでも、かけられた言葉はリフレインし、消えていく星々はうつくしく、恐怖の中に愛が残り、自身に"39 great years. Thanks, Chuck."と言ってあげられる。宇宙カレンダーの中では一瞬の人生。

最近、今流行りの「レジリエンス」「自尊感情」「アファメーション」的な力 自分はだいぶ弱いな…、という自覚が出てきたので、そういう部分でも感銘を受けました。


『ベンジャミン・バトン』『アバウト・タイム』『LIFE!』の鑑後感とも通じるものがあると思う。わたしが好きな物語です。


★★★★