ベンジャミン・バトン 数奇な人生

f:id:tally:20181229134658j:plain


人生は素晴らしい。
80歳で生まれて、若返っていく男の話。
デヴィッド・フィンチャー×ブラッド・ピット×ケイト・ブランシェット

原題:THE CURIOUS CASE OF BENJAMIN BUTTON
監督:デヴィッド・フィンチャー
脚本:エリック・ロス
原作:F・スコット・フィッツジェラルド
音楽:アレクサンドル・デプラ


実は去年から「今年初の映画はこれ」と決めていたのですが、自分の中で勝手にハードルが上がりすぎていて、観にいくのが遅くなりました。今年5本目。

わたしの周りでは「あと一歩」の声が多く、わたしの隣に座っていたおばさまは「寝ちゃったー」などと言っていたので、首をひねってしまうのですが、わたしはなんでかちょうぐっときてしまいました。なんかうまく言えないんだけど。

フィッツジェラルドの原作は未読で、ほんとは異色の短編らしいのですが、映画は不思議にフィッツジェラルド臭がたちこめていました。若さやイノセンス、人生の頂点期に対する郷愁、失いつづけるということ。

設定は奇怪なのだけど、それがふつうの時間の流れに生きているわたしたちの人生をこそ逆に色濃く映し出していてびっくりしました。きょうだいができたときの心細さ、テーブルの下でのないしょ話、独りだち、真夜中のホテルでの逢瀬、ファースト・キス、変わってしまった幼なじみ、短くて濃密なしあわせ、父親になる不安、出会いと別れ、ラッキーとアンラッキーー。人生がよるべない小舟のように思えるあのかんじ。
かなしい設定が逆に甘美な糖衣に。長くは続かないとわかっているからこそ、今を「永遠」と信じたくなる瞬間。逆説的にこころを揺らされました。

エリック・ロス脚本だし、タイトルも内容もってことで「フォレスト・ガンプ」をほうふつとさせますが、こちらのほうがぐっとシック。さすがデビッド・フィンチャー、画のつくりこみがすばらしいです。
あとケイト・ブランシェットじゃなかったら、いい映画と思わなかったかもしれない。逆にブラピが悪いわけじゃ全然ないんだけど、ヒース・レジャーがこの役を演じていたら、もっとちがった感慨がうまれていたかもしれない。


★★★★★