インランド・エンパイア

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私も、世界も、乱れていく。

原題:INLAND EMPIRE
監督・製作・脚本・編集:デヴィッド・リンチ


かかってる映画館が少ないせいか、満員でした。客も皆どことなく濃くて気むずかしそうなひとに見えて、自分もそう見えてたらやだなとちょっと思いました。

リンチ最新作。基本はいつもと変わらず。数々のエピソードが精神世界の話であり、霊の話であり、人格の話であり。ただいつもにも増して多重構造で、抽象的で、長尺です。
大分すると世界が5つ?あるので、頭の中に一応あいまいフォルダつくってみて、でもほぼ感覚と雰囲気で流し見しました。途中でドロップアウトしているひとも多かった。わたしも途中でうつらうつらしましたが、なんかそれもリンチの計算の内って感じがしました。

夢をまるまる映像におこすとまさにこういう感じだなあと。たまにこわい夢を観るけど、こわいだけじゃなくてストーリーもなんとなくあって、かつスリリングでエキサイティングで意味深な夢だった。起きたときにもなまなましく感触が残っていて、「これを小説にしたらものすごいことになっちゃう」と思うんだけど、言葉にしようとするととりとめがなくて、整合性が失われていって、詳しく思い出そうとするとどんどん記憶が逃げていってしまう。

あとは普通にこわかったよ。ようやく見終わったツイン・ピークスにも「人はなぜ暗闇を恐れるのか」というようなせりふがあったけれど、そういう根源的な恐怖というか人智を超えたものの恐怖を写してるような部分がやっぱり狂ってる。まさに鬼才。

ラストが白眉でした。あの強い萌芽感・昇華感は新しかった!だんだんこの作品の記憶が薄れていって、ラストの印象だけが残りそうな気がします。この作品をもう1度まるまる観る気にはならないけど、ラストはもう1回観たいなと思いました。


★★★★