愛と希望、どちらを捨てるか。
発達障がい児の親は法的措置なしに養育放棄できるという
法案が成立した架空のカナダ。
ADHDの息子スティーブと母ダイアンを、
吃音で休職中の教師カイラが助けるが……。
原題：MOMMY
監督・脚本：グザヴィエ・ドラン
撮影：アンドレ・ターピン
オリジナルスコア：ノイア
打ちのめされて魂が震える。『トム・アット・ザ・ファーム』もおもしろかったけれど、「きたきたきた〜」と拳を握らざるを得ない今作。「正しさ」がこれっぽっちも役に立たない世界ー、居場所がないひとたちの"Struggle"をまざまざと描いてみせる手腕の鮮やかさ。
また映画的な昂揚感あふれるシーンの数々。"World is Yours!"でドフレッシュなOasis使いに、ラスト圧巻のLana Del Rey使い。台所で３人で踊りだす、モラトリアム期間の喜びの爆発に、カイラの引っ越しによってそれが終了するときの、双方の身を切るような痛みの伝播。
毎回思うけど、いったいどんな人生経験を積んだらこんな映画が撮れるのか。このひとの映画に救われるひとが信じられないほどたくさんいると思う。
★★★★
