リバー・オブ・グラス


原題:RIVER OF GRASS
監督・脚本:ケリー・ライカート
撮影:ジム・デノールト
編集:ラリー・フェセンデン
美術:デイブ・ドーンバーグ
衣装:サラ・ジェーン・スロトニック
音楽:ジョン・ヒル


ずっと気になっていたけど観る機会を逃しつづけていたケリー・ライカート監督作。アマプラにどさっと来ていたので、まずはデビュー作を観てみました。

うーん、好き!そもそもの音楽が良いのもあるけれど、画のつなぎ方と間に独特のリズムとグルーヴがあって、とても音楽的な作家性をもつ監督だな、と感じた。ふしぎな余白と浮遊感がある。あとは、オフビートな笑いのセンスが最高だった。何回も声を出して笑ってしまった。起こしにきたママに銃むけないでw 銃でゴキブリ撃ち殺さないでww ポンコツすぎる登場人物たち、シュールコントのような展開。個人的にはジャームッシュの映画を観ているときの感覚に近いと思った。

基本的にはどこへも行けない倦んだ逃避行がつづくのだが、なぜか時おりヒヤリとするようなこわさや不穏さがほんのかすかににじむので油断ならない。気のせいかな?と思うくらいすこしだけ。実際にはたいしたことはなにも起こっていないのに、コージーのモノローグにどこか心がざわつく。そうしてたどり着く彼女の飛躍には、逆にたいしたことは起こっていないような、そして妙な解放感があってなんともふしぎな味わいが残る。監督が称する「ロードの無いロード・ムービー、愛の無いラブ・ストーリー、犯罪の無い犯罪映画」はまさに言い得て妙。


前日に、夫に借りて『モデラート・カンタービレ』を読んだところだったのだが、この話も何も起こっていないようで、女性の得体の知れなさが本当にかすかに香る形で描かれ、最後に抑圧がふっと爆発する。それがちょっと通じるところがあるな、と思って、偶然のシンクロにうれしくなりました。


★★★★