ウェンディ&ルーシー


原題:WENDY & LUCY
監督・脚本・編集:ケリー・ライカート
原案・脚本:ジョン・レイモンド
撮影:サム・レビ
美術:ライアン・スミス
衣装:アマンダ・ニーダム


愛犬を映画に出す監督って本当に最高だし、ミシェル・ウィリアムズって途方に暮れた寄る辺ない役が本当に似合うな。

まず、お金がないうえ犬もいなくなるなんて、個人的に「泣きっ面に蜂」の最上級という感じで本当につらかった。あと、こればっかりは仕方ないのですが、犬の安否が気になってしょうがなくて……。本題とは関係ないところでずっとソワッソワしてしまいました。


それはさておき。今作は「進めないロードムービー」。いよいよミニマルな作劇に磨きがかかっていた。飄々淡々とした描写ながらウェンディの不安や焦りはヒリヒリと胸に迫ってくるし、ずっと個人の物語なのにつよく時代の空気を感じさせる。ウェンディも好きで車中泊をしているわけではないし、警備員のおじいさんも好きで彼女を追い出したいわけではない。みんな悪くない、時代が悪い。それでも、その中で人は小さななにかを選び取り積み重ねてゆく。

最後も決して希望というような強い言葉では言い表せないけれど、それでもたしかに感じられるギリギリの「前進」に心がふるえた。


★★★★