ファーザー

老いによる思い出の喪失と、親子の揺れる絆を描く
かつてない映像体験で心を揺さぶる今年最高の感動作
第93回アカデミー脚色賞/主演男優賞

原題:THE FATHER
監督・脚本・原作:フロリアン・ゼレール
脚本:クリストファー・ハンプトン
撮影:ベン・スミサード
編集:ヨルゴス・ランプリノス
美術:ピーター・フランシス


題材が個人的に最も恐れていることの一つだったので、鮮やかすぎる監督の手際もあいまって、とにかくずーっとこわかった。少しずつ、あるいは突然変わる部屋、家具、人の顔。永遠にくり返されるような問い、会話。

人を人たらしめているものとは何なのか、人との関係を築いている礎とは……。老いていけばいくほど、「記憶」や「思い出」がだいじなものになっていくと思うのだけれど、それすらも葉が落ちるように失っていく切なさ、その無常。劇場内ではけっこう笑いも起きていたのだけれど。


アンソニー・ホプキンスの演技は本当にすごいし、この向こうを張れるのはオリヴィア・コールマンしかいない、と思わされた。


★★★★