女王陛下のお気に入り

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ごめんあそばせ、
宮廷では良心は不用品よ。
17人の子供に先立たれた孤独な女王と、
その寵愛を取り合う二人の女。
18世紀、イングランドで起きた禁断の物語。
2018年ヴェネツィア国際映画祭銀獅子審査員大賞

原題:THE FAVOURITE
監督:ヨルゴス・ランティモス
脚本:デボラ・デイヴィス、トニー・マクナマラ
撮影監督:ロビー・ライアン
編集:ヨルゴス・モヴロプサリディス
美術フィオナ・クロンビー
衣裳:サンディ・パウエル
音響:ジョニー・バーン


「女優」たちの三つ巴の演技合戦&ときめきしかない衣装、最高かよ~~~!『メリー・ポピンズ リターンズ』に続き、サンディ・パウエル様、本当にありがとうございます。黒レースの眼帯には、胸を撃ち抜かれました!!!

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エル・ドライバー a.k.a. ダリル・ハンナを思い出したよ~。


いやはや、ひとの感情の種類って、ひとのこころを支配する手管って、こんなにもたくさんあったんだなぁ、と近ごろめっきりさびついているセンサーがめまぐるしく稼動しました。
飴と鞭、賞賛と嘲笑、崇拝と軽侮、献身と威圧、共犯者と庇護者、嘘と真実―、性技、思い出話(ずるい!)、自分の傷をさらすこと、相手の傷に寄り添ってみせること。
3人の女の中の、誰か1人の視点を選んで観ても、内2人の関係性に着目して観ても、3人のバランスを俯瞰で観ても、どれも見ごたえがある。

過去作に比べて格段にわかりやすい設定だけれど、ヨルゴス・ランティモス印の、不条理で滑稽な「檻」に囚われた人間の「さが」をあぶりだす描写と、ばっちりハマっていて、「これはいい題材を選んだなぁ」とホクホクしてしまいました。

陣取りゲームを描いたソープ・オペラ的なおもしろさはもちろんだけど、愛憎や私欲を描くだけではおわらない。俗悪さの中に崇高さが顔を出すバランスは、同じく笑ってしまうほどの共依存ゲームを描いた『ファントム・スレッド』を思い出したりしました。
もっと言えば、虚構や滑稽さや軽薄さと、人生の深刻さや重大さやかけがえのなさが、分かちがたく結びついている様子は、『存在の耐えられない軽さ』。


わたしの推しは、やはりレイチェル・ワイズ演じるサラ。
鑑賞中はあまり意識していなかったけれど、今にして思えば、わたしはオリヴィア・コールマン(アン女王)の視点で観ており、結局これはずっと2人の物語だった、とすら思ってしまった。途中、エマ・ストーン(キャリアハイ更新のハマり役!)のコケティッシュな魅力に陥落しつつも、終盤は自分が見つめ続けたひとは誰だったかに気づく。

この女王の描写のバランスがすばらしくて…。彼女はアビゲイルの魔性やサラのある種の高潔さにずっと勘付いていたようにも、サラが去ってようやく気づいたようにも見える。そして、サラに甘い嘘を言ってほしい反面、決して嘘吐きに堕ちてほしくないようにも、彼女に戻ってほしい反面、彼女を解放したいようにも見えた。

この機微は、『運命の女の子』の「きみはスター」を思い出したりしました。

星は落ちてこないから星なのだ と
ぼくのスター けしてぼくを好きにならないで


ラストの、死のにおいに満ちみちたうさぎたちのショットが示す通り、アン女王は近い将来崩御することとなる。アビゲイルの「あれ?わたしが欲しかったのってこれだっけ?」という最高の死んだ目を見て、サラは試合に負けて勝負に勝ったのだ、と思いました。


★★★★