ファントム・スレッド

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オートクチュールのドレスが導く、禁断の愛。
ダニエル・デイ=ルイス引退作
1950年代、ロンドン。
天才的な仕立て屋は、若きウェイトレスをミューズに迎える。
運命の糸がほつれ、絡み合い、ふたりは思いもよらぬ境地へとたどり着く―。

原題:PHANTOM THREAD
監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
編集:ディラン・ティチェナー
プロダクションデザイナー:マーク・ティルズリー
美術:デニス・シュネグ / クリス・ピーターズ / アダム・スクワイアーズ
衣装:マーク・ブリッジス
作曲:ジョニー・グリーンウッド


とてもおもしろかった〜〜。崇高さと俗悪さが分かちがたく結びついてしまうバランスが、『存在の耐えられない軽さ』のようだ、と思いました。

PTA作品だと、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』に近い感触。ともすればメロドラマ(今回は笑えるホラーの域に達した共依存ゲーム)に陥りそうなストーリーを、美麗な*1音楽と衣装でぐっと底上げする感じと、もはや観客の共感など受けつけない、主人公たちのすがすがしいまでの突き抜けっぷり。そこまでたどり着かないと落ち着かない男女の愛憎というものに恐れおののきつつも、「もう好きにしてよ〜」と笑ってしまう。今回、TWBBの「ミルクシェイク」に相当する「バターソテー」にわたくし爆笑してしまいました。『ミザリー』もびっくりだよ!

しかし、ただの狂気沙汰/エクストリームな話で終わらないのは、さすがPTA。母の呪いを解いてくれたかのように見えた女が、実は呪いを引き継いだのだということがわかる流れの心の温度の下がり方!

そして、なんと言っても白眉なニューイヤーズ・イヴのシーン。男が忌み嫌う俗悪の極みのような場所へ、かつて同志と感じた思い出を踏みにじるような装い*2の女を追ってゆく、という
パワーバランスが完全に逆転してしまう、目を覆いたくなるような悲惨なシーンを、このうえなくうつくしく、ロマンティックに描いてみせる。

その時のダニエル・デイ=ルイスに抱く感情の複雑さよ!泣き笑いと胸がしめつけられるようなせつなさ。幸福と不幸の境が溶けていくような描写は、圧巻でした。


★★★★

*1:TWBBで言えば重厚な

*2:しかも絶対に故意に