ルーム


はじめまして、【世界】。
閉ざされた「部屋」からの脱出。
大きすぎる世界に飛び込んだ、母と息子の衝撃の感動作。
第88回アカデミー主演女優賞

原題:ROOM
監督:レニー・アブラハムソン
脚本・原作:エマ・ドナヒュー『ROOM(部屋)』
撮影:ダニー・コーエン
編集:ネイサン・ヌーゲント
衣装デザイン:リア・カールソン
音楽:スティーヴン・レニックス


7年間密室に監禁された女性と、そこで生まれ育った5歳の息子、というショッキングな題材にも関わらず、たいへん普遍的な物語で、子どもってたくましいなァ、これは子を持つ親たちが観たらひとたまりもないなァ、と思いながら観ました。

ジョイをとりまく状況ってなんか最近ものすごく身近で聞く話のような気がするな……とモヤモヤしていたら、"I'm supposed to be happy.(ハッピーなはずなのに)"というせりふが出てきて、ぞわりとした。産後うつじゃん。

子どもはかわいいのに、一日じゅう2人で向き合わなければならない圧迫感、物理的に外出もままならない閉塞感、「自分の育てかたは間違っていない」と証明しなければいけないような強迫観念―友だちがそろって「きついよー」と笑うアレってコレか?そんなお母さんたちにとって、この映画におけるジャックのまばゆいばかりの成長は、ほんとうに心強いだろうし、「親はなくとも子は育つ」とすこしは楽になれるかも、と思うと、ありがたやありがたや。

個人的には、ひとがどん底にいるときの「レオ」的存在の描き方にぐっときました。例えば失恋したとき、愛するひとを亡くしたとき、その前の自分と相手を知らないひとの存在がなんと安らかなことか。そのフラットな接し方にどれほど救われることか。

いい映画だし、見当はずれなこと言うけど、やっぱりわたしはオールド・ニックをぶちのめす映画が好きだよ。ジョイ父が「家族の尊厳のために一切供述しない」って息巻いていたけど、それって軽犯罪にしか問えないってことなわけで……。オールド・ニックといい、ジョイ父といい、話を聞かない警官といい、「できない」男たちに監督の意図以上にげんなりしてしまったせいかもしれない。


★★★