ジョゼと虎と魚たち

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忘れたい、いとおしい、忘れられない。

監督:犬童一心
脚本:渡辺あや
原作:田辺聖子
音楽:くるり


ダッシュで借りに行きました。
この作品の評判を聞いていながら敬遠してた理由は、やはりキャスティングにあると思います。特に妻夫木さん。別に嫌いじゃないし、演技もできると思っているのに、なんとなく人工的なクリーンさを感じて、お腹がふくれてしまうのです。

ところがどっこい。観てみると、私は妻夫木さんに泣かされてしまったわけですよ、これが。池脇さんももちろんすごいですが、妻夫木さんがそれとはれるくらい「普通」を演じきっていてバランスがすごい。
陽と陰。普通とエキセントリック。妻夫木さんがごはん食べるシーンとか、屈託のなさや健全さを自然に示していて、それがどれだけジョゼにとってまぶしかったのかが伝わってきました。

それでもジョゼのある種命がけのひたむきさを恒夫が抱えきれなくなるという気配は、自然すぎるくらい自然に画面を侵食してきていて。恒夫の一連の行動から感じる、男の弱さ・ずるさ・情けなさを不快と取る人もいるようだけど、私にはそれがすごくリアルで健全だと感じられました。

メゾン・ド・ヒミコ』が泣き笑いしながら観てた作品とすれば、『ジョゼ虎』ははらはらヒリヒリの余り、眉間にしわよせて観てた作品です。また、『メゾン・ド・ヒミコ』がざっくりかつ爆発力がある作品とすれば、『ジョゼ虎』は細やかで緻密。ジョゼの家のガラス戸がすごく効果的に使われてて、中にひとがいることはわかるんだけど、表情はわからない―絶対的な壁みたいな撮り方が切なかった。

ラストの〆方すごくよかった。くるりも最高。くるり以上にこの映画に合うアーティストをちょっと思いつかないくらい。


★★★