トウキョウソナタ

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ボクんち、不協和音。
といいつつも普遍的な「家族」を描いています。どんな家族もフツーであり、異常である。家族の特殊性・閉鎖性ー家族のフシギ。

監督・脚本:黒沢清
音楽:橋本和昌


黒沢清はやっぱりキレキレです。いやー、ぐわんぐわんしました。ひとりで観に行ったんだけど、よかった。たぶん他のひとと観に行ってたら、その後ぼーっとしちゃって会話にならなかったもの。現実になじむのに時間がかかりました。

前半は家族のエピソードが淡々と積み重ねられていきます。リストラされたことを家族に言えない父、世界平和のためにアメリカ軍に入隊する長男、こっそりピアノを習ってるさとい次男。その描写に特別な感情はこめられているように見えないのだけど、夫の帰りを待ちながらソファで寝ちゃって、「ゴハン食べてきたから」と言われてしまうあのかんじ。家族の中で女のひとひとりだけがより多くの秘密をにぎってるあのかんじ。(『空中庭園』は原作既読で映画未見ですが、コレもキョンキョンだったよね?こういう途方にくれた役がハマるひとなのかもしれない。)

家族内では深刻きわまりないのに、端から見るとちょうこっけいなあのかんじ。ガードできない部分のこころのひだになんの感情かうまく判別つかないんだけど、こまかい粉がパラパラ降ってくるような感覚を味わいました。ちょうゆらされた。

後半にかけて、いかにも映画らしいファンタジックな一夜を経て、「再生」と呼ぶには未熟ではあるものの、家族が再び寄り添っていきます。
その一夜が、みんな個人戦になるのがおもしろい。各個戦闘状態。結局、個々人の問題に解決を見いだせるのは自分自身しかいないんだけど、それでも帰る場所がある。家族で一緒にいるということの幻想に希望が見えるのがよかったです。うつくしかった。

ものすごいリセット効果のある映画だと思った。最近ちょっとつまらないことで凹まされていたのですが、だいぶリセットできました。I have seen the Light!


★★★★★