アキレスと亀

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スキ、だけど。スキ、だから。
画家という夢を捨てきれない・倉持真知寿の半生を描く。

監督・脚本・編集・挿入画:北野武
音楽:梶浦由記


さて友だちと行きにくい北野映画です。われら姉妹は北野新作には金を払うと決めていて、たとえあんまりおもしろくなかったとしても悔いるべからず、と思っているので、いつも北野映画はドラちゃん(妹)と観に行くことにしています。ところが今回ドラちゃんがヘルニアのためやむなく欠席、ぐずぐずしてると打ち切りになりかねないということで、託されての鑑賞です。おっかなびっくり。

『TAKESHIS'』『監督・ばんざい!』が難解でヒットしなかったから、『アキレスと亀』は分かりやすく撮ったーというふうに聞いていたのですが、結果的にはこの3作の中で『アキレスと亀』が1番狂ってると思いました。アートに魂を捧げた者の狂気を描いているので、狂ってて当然ちゃー当然なのですが・・・。勝手な思い込みだけど、わたしは今回フツーに夫婦のいい話を撮ってるかと思ってたので、びっくりしました。

さっき狂気と書いたけれど、もう当人の意思を超えた呪いを描いたような映画じゃあないですか!すごくこわかったのが、家族を顧みず、倫理・常識が欠落している真知寿が絵に関しては(どうやら)認められたがっているらしく、画商の無責任な意見には左右されほうだいなところ。そんな真知寿を武が演じることで、ちょっとちゃめっけが出ちゃってるところ。そしてさらに音楽が感動作っぽいスパイスで味つけしているところ。ふぃ〜、こえー!

真知寿は芸術に呪われてるし、真知寿の妻は真知寿に呪われてる。夫婦愛というよりは「夫婦のことは当人同士にしかわからない」というようなずーんとした感覚を得ました。

「『アートはやってるだけで幸せである』ということで、作品が評価を受けたり、客が入ることは考えるのは止めようっていう諦めの境地みたいな映画」と北野武は語っていますが、あきらめないでほしい。『TAKESHIS'』おもしろかったよ!あ、あと電撃ネットワークが出てくるのがたのしかったです。