ミッドサマー


祝祭がはじまる
5人の学生が招かれたのは、白夜に照らされた狂気の祭だったー
恐怖の歴史を覆すフェスティバル・スリラー

原題:MIDSOMMAR
脚本・監督:アリ・アスター
撮影監督:パヴェウ・ポゴジェルスキ
編集:ルシアン・ジョンストン
プロダクションデザイン:ヘンリック・スヴェンソン
衣装デザイン:アンドレア・フレッシュ
音楽:ボビー・クルリック


『ヘレディタリー/継承』で、「次回作はイケそうだ!」と思ったものの、やはり土壇場になると「ひとりではむりかも…」と尻込みしてしまい、夫につきあってもらいました。

結果、この奇祭楽しんでしまった……!トリップ祭からの惨劇という面では『CLIMAX』を、ある種の連帯を伴う、女王支配の治外法権コミュニティという面では『サスペリア』を、思い出したりしました。

観方や経験によってはものすごく不快に感じるひともいるだろうな、と思う一方で、諸星大二郎先生を擁する我が国には比較的親和性が高いのでは?と思ったりも。
主人公ダニーは完全に苦手なタイプだけど、アリ・アスター流の「失恋ムービー」として観ればこの上なく清々しいおとぎ話…。*1
もともとゾッとする不気味さと爆笑の表裏の配分が無二の監督だけに、民間伝承的なモチーフは相性ピッタリでした。


以下、ネタバレ


こんなに主人公に寄り添っていいのか!?と思うほどの「救済ルート」の示し方に「ちょ!おまwww」となりました。アリ・アスター監督自身の失恋が投影されているならなおさら……w「個を喪失して共同体に取り込まれたい時もあるよね〜(ウインク)」ってか!でもこのコミューンのあり方やメイ・クイーンのゆくすえが「しあわせ」という風には全く描かれていないのがおもしろかった。


  • 音がキレッキレ。TCX × DOLBY ATMOSでの上映も納得
  • とにかく親切設計。キメッキメの画ですべてを予告&説明してくれる。ものすごいサービス精神。
  • 『ヘレディタリー』に引き続き、緻密でロジカルすぎて妙なあかるさすら感じる。とにかくカルトの規範に沿わないやつが死ぬ!
  • クリスチャンの素質が味わい深い。「研究者の風上にも置けん!」と憤慨しつつも、取材の根回しのすばやさ、極めつけには入念な現場観察など、恐怖を好奇心が上回るさまにはちょっと感心すらしてしまった。そしてコイツに「異文化を尊重せよ」と正論をぶたせる意地の悪さよ
  • どんだけ!みこし!すきなんだ!
  • ハンマーが念入りすぎる
  • あんな火力であぶってもあんなきれいに燃えないぞ!
  • 味覚と嗅覚どうなってるんだ
  • 意図的な近親相姦で賢者を生み出すシステム ドン引き
  • 全裸のババアすきだな!
  • 性交中にババアに尻を押される地獄
  • 志願者の最期がよい。イチイエキスもっと効いて……。



おててヒラヒラのバンザイなど、今回もマネしたくなる小技が盛りだくさんだし、まんまとグッズが欲しくなる。この映画のネタでキャッキャできるので、夫もいっしょに観てくれてほんとうによかった。(じゃないとひとりで勝手にやるため、後日結局夫も観なければ平和な夫婦生活に影が差す。)

わたしはダニー=アリ・アスターとして観たうえ、根がパリピなので、「メンヘラ歓喜のセラピーなのかな?」と捉えたけれど、そんな単純な話でもないようで、映画こわい。


note.com


★★★★

*1:紙芝居調のオープニングから「"happily ever after"以降の怖さははかりしれない」という余韻まで完全におとぎ話