空気人形

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心をもつことは、切ないことでした
「心」を持ってしまった空気人形のお話。

監督・脚本・編集・プロデューサー:是枝裕和
原作:業田良家「ゴーダ哲学堂 空気人形」


こわい!異様にどきどきした!!あのメインビジュアルだけで勝ちでしょー、とか思って、もっと「せつないファンタジー」という言葉でくくれるような作品を想像していたので、血を見ました。。。種田陽平のドリーミーな美術(すばらしい!)とか思わず笑っちゃうおかしみのあるやりとりなんかもあるんだけど。すごくいびつでアンバランスな作品だなあと感じたし、ものすごく生々しいところとおそろしく現実感が希薄なところが極端で、今も正直この作品をすきなのかきらいなのかさえもうまくつかめておらず、こわいです。
思えばわたし、『誰も知らない』のときも同じようなこと書いてる。『イノセンス』思い出しちゃったりもした(種田陽平だし!)。

いちばん危険だったのが、ぺ・ドゥナのはだかでした。すごいリアリティがある一方で、すごく人形っぽくもあるはだか。リー・ピンビンの撮影に依るところも大きいと思うけど。それでなにかを決壊させられた気がします。
そもそもわたしはからだを信用しすぎるきらいがあるので。是枝監督入魂の「空気を好きな人に吹き込まれる」シーンはさすがでした。
あと最初にシュウウエムラに行くシーンもすきだったな。すきなひとによく見られたいんだなっていうかわいい考えがすごく自然に伝わってきた。

空気人形を中心に、からっぽをなにかで埋めようとする人々の姿も並行して描かれているのですが、男性の性の描き方が興味深かったです。「誰とでもしちゃうんだ?」みたいなせりふを男性に言わせつつも、逆に男性の切り替えの早さとか薄情なところを描いてみせるエピソードが気を引きました。この市井の人々は一義的で形式的な描かれ方がひっかかりました。

観てる最中はまるで空気が抜けないようにするかのごとく、
首を押さえていました。頸動脈をみて、「生きてる生きてる」みたいな。でも観おわったあとは、空気が抜けたかのごとく、力が入らず。とりあえずあったかくてぎっちり味のしみたそぼろごはんを食べて、「わたし生きてる!」と思いました。すばらしき哉、血肉!


板尾さん、よかった!