ダンシング・チャップリン


草刈民代のラストダンス
フランスの名振付師ローラン・プティによる、チャールズ・チャップリンを題材としたバレエ「ダンシング・チャップリン」の舞台を映画化。チャップリン役を務めるルイジ・ボニーノや草刈民代ら、世界のトップダンサーが舞台に臨むまでの60日間を追った「アプローチ」と、本番の演目を収録した「バレエ」の2幕構成。

監督・構成・エグゼクティブプロデューサー:周防正行
振付:ローラン・プティ
音楽:チャールズ・チャップリン / フィオレンツォ・カルピ / ヨハン・セバスチャン・バッハ / 周防義和
衣装・装置:ルイザ・スピナテッリ
バレエマスター:ジャン=フィリップ・アルノー


妹から激推しされていたのと、どーしても劇場で観たかったのとで、三茶・中央劇場のムーヴオーバーで観てきました。コレ、バレエも映画もだいすきなわたしにとっては、すっごくすっごくおもしろかったです!

まず1幕目の「アプローチ」では、本番までの舞台裏を描いてみせる。91年初演の舞台の忠実な再現しか認めないプティと、単なる舞台中継になることをおそれ、あくまで映画で勝負したい周防監督とのガチンコ対決。「その演出ならぼくは降りる」とのたまう帝王プティの前に、映画監督としての意地にひそかに燃える周防監督。ふたりとも知的でおだやかな人となりだけに、よけいに火花がスリリング。
一方、ダンサーチームもタイトなスケジュールのなか、緊張感のあるやりとりが続く。ひとつひとつの動きの解釈、どうしてもうまくいかないパート、ナーバスになるプリマ、ペア交代に至るまでの一部始終、そこに発生する金銭に、プロデューサーの奔走。ルイジ・ボニーノのチャーミングな人柄に思わずにこにこしながらも、まぎれもないプロの舞台裏に2幕目への期待が高まる。

2幕目の「バレエ」ではそれらをすべて回収。なにしろ草刈民代が美しすぎるー、還暦を迎えたルイージ・ボニーノが誰よりもキレているー、ローラン・プティの振付がフレッシュすぎるー、という舞台のすばらしさはもちろんのこと。1幕でずっと追ってきた、あの苦労したシーンがこんなに美しくなるのかー、周防監督の意図はここにあったのかー、とすべての汗とアイデアが舞台に結実していく。そして「だからこそ映画でやる意味があるんだ」と言わんばかりにそこかしこに冴えわたる周防監督の映画的技法/演出。綿密なカメラワーク、コマ落とし、ストップモーション、カラースイッチング。バレエのプロと映画のプロが手を組んだ、完全なるプロの仕業。結局ものごとに取り組むときの、「考えて考えて考え抜く」ストイックな姿勢と完璧主義者っぷりが似たもの夫婦なんだろうなー、と思わせる映画でした。
よかった!周防監督の次回作もたのしみ。


★★★★★