バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)


すべてを手に入れ、すべてを手放した。
もういちど輝くために、もういちど愛されるために、いったい何をすればいいのか―。
かつてスーパーヒーロー映画でスターになった男が、家族の愛と人生を取り戻すため、ブロードウェイの舞台に立つ―。
第87回アカデミー作品賞/監督賞/脚本賞/撮影賞

原題:BIRDMAN OR (THE UNEXPECTED VIRTUE OF IGNORANCE)
監督・脚本・製作:アレハンドロ・G・イニャリトゥ
脚本:ニコラス・ヒアコボーネ / アレクサンダー・ディネラリス・Jr / アルマンド・ボー
撮影監督:エマニュエル・ルベツキ
編集:ダグラス・クライス / スティーヴン・ミリオン
音楽:アントニオ・サンチェス


すごい!ーんだろうけど……というのが、率直な感想。神業的なカメラワークと緻密に織りなされた何重ものメタ構造、パンチの効いたブラックジョークとアイロニー。たしかに感心はするし、注目している監督なんだけど、残念ながらノレなかった。これまた皮肉なことに、監督が脱却をはかったはずの頭でっかち臭を、過去作以上に感じてしまったのだ。

個人的にこの映画でおもしろかったのは、映画そのものよりも試金石的な要素。端的にいうと、ラスト観客がどこに連れていかれるか、というところ。町山さんが「元気になった。また飛べる!っていう気持ちにさせてくれる映画」と評しているように、アッパーに捉えているひとがいる一方、いっしょに鑑賞した弟は「胃が痛くなった」とかなりダウナーになっていた。

わたしもどちらかというと後者。ラスト主人公が再び羽ばたくであろうことが示唆されるけれど、正攻法ではなく、スキャンダラスでトリッキーな禁じ手でカムバックした以上、今後大衆にはそれを超えるものを提供するよう求められるだろうし、自身もまたそれに追いつめられるのでは……。

この構造から『へルタースケルター』を思い出したりしたけど、こっちのほうが突き抜けてるぶん、わたしはアッパーになれるなあ。


『レスラー』っぽさもあるよね。


★★★